三菱重工技報
    Vol. 58 No. 1 (2021)   新製品·新技術特集
    技術論文

    製品の摩擦損失低減·効率向上を実現する低摩擦表面処理を用いたしゅう動面改良技術

    Sliding Surface Improvement Technology Using Low Friction Surface Treatment to Reduce Friction Loss and Improve Efficiency of Products

    洞口典久
    Norihisa Horaguchi
    石本孝生
    Takao Ishimoto
    倉地浩平
    Kohei Kurachi
    梅原徳次
    Noritsugu Umehara
    李義永
    Lee Woo Young
    洞口典久
    石本孝生
    倉地浩平
    梅原徳次
    李義永

    IBA‐FAD法(Ion Beam Assisted Filtered Arc Deposition)により成膜したta‐CNx膜を用いて摩擦試験を行った結果,冷媒雰囲気での乾燥摩擦における摩擦係数は約0.02,冷媒と冷凍機油の混合雰囲気では0.03以下を確認し,現行DLCコーティング(Diamond Like Carbon Coating)の摩擦係数 約0.1に比べて約1/3以下の低摩擦を発現させて,先行他社(自動車エンジンで使用されている)DLC対比や,コーティングなしの摩擦係数0.1-0.15と比較して,従来よりも大幅な低減を実現する技術を開発した。また,エンジンオイル雰囲気では,オイルに新たな添加剤を追加配合した条件において,摩擦係数0.04の低摩擦を確認した。摩擦試験後の摺動面の観察と反射分光分析により,摩擦面に生成したトライボフィルムを確認し,ta‐CNx膜の低摩擦機構を明らかにした。更に今回,一例として,開発したta‐CNx膜を空調用圧縮機のしゅう動部品に適用した結果,約1%の効率向上を達成した。