三菱重工技報
    Vol. 58 No. 4 (2021)   航空宇宙特集
    技術論文

    国際宇宙ステーション向け大型遠心実験装置の開発

    Development of Large scale Centrifuge Facility for the International Space Station

    提祐樹
    Yuki Sage
    竹田順哉
    Junya Takeda
    萩原裕介
    Yusuke Hagiwara
    村瀬浩史
    Hirochika Murase
    小野裕義
    Hiroyoshi Ono
    小浜晃正
    Terumasa Kohama
    提祐樹
    竹田順哉
    萩原裕介
    村瀬浩史
    小野裕義
    小浜晃正

    ライフサイエンス系の宇宙実験は,地球生命にとって普遍的に存在する重力が生命に与える影響を研究することを重要な目的の一つとして,人工衛星やスペースシャトルなどを用いて行われてきた。軌道上で重力の影響を評価するためには,宇宙線や電磁波などの重力以外の環境をなるべく同一にした対照実験を行い,重力だけの影響を特定することが重要になる。軌道上の環境を地上で再現することは難しいが,軌道上に重力環境を構築することで対照させることが可能となる。軌道上で重力環境を構築するには,回転体を用いて遠心力を発生させる必要があり,コリオリ力や重力勾配の影響を小さくするために大きな回転径が望ましいものの,宇宙機に搭載可能なスペースには制約がある。国際宇宙ステーション(ISS)日本実験棟"きぼう"の船内実験室では,搭載可能スペースを最大限に活用した,ISS最大規模の回転径を有するライフサイエンス系の遠心実験が可能となっている。また,遠心力を使って重力を発生させることにより,地上では発生させることが困難な1G未満の重力を長期間安定的に付加することが可能となり,月面や火星等の重力環境の模擬も可能となっている。本報は,当社が開発し2020年より運用を開始した大型遠心機(回転半径 38cm)を搭載する実験装置の開発及び初ミッションについて紹介する。