三菱重工技報
    Vol. 51 No. 3 (2014)   機械·設備システム特集
    製品紹介

    自動車部品の樹脂化を実現する成形技術

    Molding Technology to Realize Resinification of Automobile Parts

    三菱重工プラスチックテクノロジー(株)
    営業部

    近年,環境保全や持続可能な社会の構築に貢献するため,自動車業界では,ハイブリッド車,EV(電気自動車)などのエコカー開発と並行して,燃費向上のために車体の軽量化技術に対するニーズが大きい。一方,市場競争力向上も同時に達成する必要があるので,軽量化とトレードオフとなる低コスト化やデザイン自由度の実現が課題である。 自動車車体は,フロントエンドモジュール,バックドアモジュールなどのモジュールとパノラマルーフなどの外装部品から構成される。車体の軽量化手法として樹脂化が有効であるが,次の要求事項の達成が課題になっていた。 (1) フロントエンドキャリアーやバックドアインナーは,高剛性と強度が要求される。 (2) バックドアアウターや外装部品は,自動車のデザインを左右するので,賦形(素材を変形させて製品を成形する方法)の自由度と塗装欠陥を生じない表面形状や曲げ剛性が要求される。 (3) パノラマルーフなどの大投影面積の外板は,通常の射出成形法では過大な型締力が必要となるので,低型締力で成形できる射出圧縮性成形法を用いる。この際,金型内樹脂圧力が偏圧となり,金型の合わせ面が平行にならず,肉厚部の寸法精度が出ないなどの問題点がある。そこで,金型の合わせ面を平行に維持して射出圧縮する成形方法が要求される。 以上の課題解決のため,三菱重工プラスチックテクノロジー(株)は,次の3つの技術を開発した。(1)高剛性と強度を要する部品の樹脂化として,長繊維強化樹脂LFT(Long Fiber reinforced thermoplastics)の長繊維をなるべく折損させずに実効繊維長を確保するLFT可塑化技術,(2)顔料マスタバッチと剛性を向上し,線膨張率を低減するタルクマスタバッチを分散させ,色むらなどの表面欠陥を防止し,賦形性が良く,ハイサイクル成形が可能な高分散高混練均一溶融技術,(3)2プラタン型締装置のタイバー4軸を独立に位置制御する4軸平行射出圧縮成形。本稿では,これら技術の特長と適用事例を紹介する。