ページの先頭です。 ページの本文へ メインメニューへ フッタへ

HOMEプロジェクトストーリー工作機械

三菱重工新卒採用スペシャルサイト

世界を変えるきみはどこにいる

写真

プロジェクトストーリー

三角柱の見慣れない形の工作機械が実現した、3次元金属加工用ヘッドの新しいスタイル。

立体造形物をつくる工作機械では加工用のヘッドを3次元に動かすメカニズムが必要だ。
一般的なNC(数値制御)マシンではXYZ3軸による直交座標系制御が主流だが、
多様な動きが求められるロボットでは多関節アームによるシリアルメカニズムを用いる。
これらに対し、ロボットでも採用されているパラレルメカニズムでヘッドを自由に動かし、
高出力のレーザー加工まで可能にしようという新しい工作機械の開発が始まった。
産学協同で進められるプロジェクトの未来には何があるのか、担当者に話を聞いてみた。

 2016年11月、東京ビッグサイトで開催された第28回日本国際工作機械見本市「JIMTOF2016」において、大きな注目を集めた出展品があった。三菱重工工作機械株式会社が慶應義塾大学SFC研究所ソーシャルファブリケーションラボと共同で開発した3D金属造形システム「⊿WORKS concept(デルタ・ワークス・コンセプト)」だ。ブースに立ち寄った参加者が最初に驚いたのは、三角柱の形をした見慣れぬスタイルのマシンである。一般的な工作機械は直方体の組み合わせが基本なので、それだけでもかなり異質だ。
「⊿WORKS conceptの最大の特色はこの形に表れていて、三角柱を形成する3本の柱に支えられたパラレルメカニズムにより、加工用ヘッドを3次元で動かすことができます。この方式自体は以前からありましたが、金属加工用の高出力レーザーヘッドを搭載したことが大きなポイントになります」
 と語るのは先端生産システム開発センター制御システムグループでグループ長を務める法山敬一だ。今回のプロジェクトは制御システムのプロフェッショナルとしてこれまで多くの工作機械を製品化してきた彼にとっても「画期的な挑戦」だったという。
「工作機械で加工用ヘッドの位置決めを行うには直交座標系で制御する方式が一般的でした。XYZ3軸それぞれに数値を指定すれば空間上の一点を確実に指定できますし、動作も精密です。機械加工に多い直線的な動きをするときにも有利でした」
 これに対してパラレルメカニズムは複数のアームで可動部を支える構造をもち、コンパクトな装置で多自由度・多次元の動作を実現できるものの、剛性や耐久性などが充分とはいえず、まだ開発途上の技術といえる。
「慶應義塾大学ではパラレルメカニズムによる樹脂の造形装置などを試作していました。我々が研究室でこの装置を見たとき、我々のもつレーザー加工技術を組み合わせれば、今までの工作機械の常識にない新しいものができるのではないかと直感しました。その想いを教授にぶつけたことから、共同研究プロジェクトが始まったのです」

工作機械開発では前例のないオープンイノベーション

 法山と一緒にこのプロジェクトを推進しているのが山本雄介だ。彼は航空宇宙工学の専攻でありながら「もっと幅広い技術に触れたい」と一旦は官庁で特許審査を行う職に就く。やがて製品開発の面白さにも気づき、メーカーを志望し、三菱重工に入社した。
「工作機械に興味があって入社しましたが、設計経験はないので最初は知財関係の仕事をしていました。そこに突然法山さんがスカウトに現れ、『電気設計をやってください』と言われました(笑)」
 山本は面食らったが、法山は終始ご機嫌だったという。
「前職や経験に関係なく、話してみて『彼なら何かできそうだ』と感じ、なんとか自分のグループに入れようと画策しました(笑)。山本君は技術全般の知識が豊富だったし、経営的な視点も感じられたので、新しいテーマに挑戦するには最適な人材だと思ったのです」
 そんな経緯で、山本も⊿WORKS conceptの開発プロジェクトに加わることになる。設計の技術はゼロから勉強するしかなかったが、パラレルメカニズムを工作機械に応用するという発想にはすぐに興味をもったという。
「⊿WORKS conceptに必要な制御システムの開発はオープンイノベーションで行っているので、さまざまな立場の研究者が情報を共有しながら作業を進めていくことができます。この方式だと広くアイデアを求められるので企業が社内だけで開発するよりも効率がいいのです」
 しかも制御は小さなマイコンチップだけで行えるので、NCマシン専用の制御システムに比べるとコストは大幅に抑えられる。法山が「画期的な挑戦」という理由はここにある。
「従来の工作機械の開発では制御システムは極秘中の極秘ですから、ソースを公開するようなことは絶対にありません。もちろん、今後もそのような製品は多く残るでしょうが、一方でオープンな制御システムで社外の人々までも巻き込んで進化していく、そんな新しいコンセプトの製品があってもいい。⊿WORKS conceptはそんな可能性を追求する実験的なプロジェクトでもあったのです」

写真

高い技術力がなければ精密な機械は完成しない

 制御システムの開発はオープンイノベーションスタイルで進めていけるものの、金属加工用のレーザーヘッドをパラレルメカニズムに載せるための機械の開発は、三菱重工工作機械の技術力に委ねられていた。山本が言う。
「パラレルメカニズムは面白い方式ですが、かなり重量のある金属加工用レーザーヘッドを載せて精密にコントロールするには少し不安もありました。結局、リンク構造を全く新しいものにし、アクチュエーターもステッピングモーターからサーボモーターに換えるなどして剛性と精度を高めたのです」
 その他にもさまざまな工夫を加えて完成したマシンは、予測を超えて素晴らしい性能を発揮した。法山がプロジェクトの始まったころを振り返ってこう言う。
「パラレルメカニズムを工作機械に応用しようと考えた理由の一つは、従来の工作機械に比べて軽量でコンパクトな製品を実現できるからです。このサイズなら小さなトラックで簡単に運べ、事務所や仮設現場などでも使えますからね」
 つまり、当初はレーザー加工による用途の拡大よりも使い勝手のよさが期待されていたため、レーザーヘッドを他の機器に交換すれば溶接や切断加工といった多くの用途に適用できるという汎用性が重視されていた。ところが強力なレーザーヘッドを正確かつ精密に制御できるメカニズムの完成により、⊿WORKS conceptは新たな機能を発揮する。それは高性能の金属3Dプリンターとしての用途だ。

金属部品も短時間でつくる3Dプリンターとしても活躍

 3DプリンターはCADデータをもとに簡単に立体を造形できることから、試作部品の製作などに広く用いられている。最近では補聴器や義歯など個々人の身体的な特徴に合わせた医療用品の製造でも欠かせない存在になってきた。ただし、今のところ造形できるのはプラスチック系の材料が主であるため、強度に限界がある。もし金属材料が使えるようになれば用途は一気に広がるはずだ。
「金属の粉末をレーザーや電子ビームなどで焼結しながら造形していく方法がありますが、金属粉末は非常に高価で、管理も難しい。樹脂プリンターのような簡単なものづくりの世界はまだ遠いと感じていました。そこで、⊿WORKS conceptでは安価で管理が容易な金属ワイヤをレーザー溶接しながら造形していく方法を採用しました。これにより、簡単ものづくりの世界に一気に近づいたのです」
 山本が自信をもって言うように、冒頭で紹介したJIMTOF2016の出展ブースでも、このマシンで製作した金属造形品を目にした人は一様に驚いたという。予想以上の成功にリーダーである法山も素直に喜ぶが、ただし「これはゴールではなくスタート地点に立っただけ」と新たな目標を語った。
「これからの工作機械の分野で価値のある製品を生み出すには、劇的な進化を続けているレーザー加工技術などで差別化していくしかありません。⊿WORKS conceptの3Dプリンター機能が注目されたのも実は同じことなのです。私たちは他にも世界で最高レベルの微細レーザー加工ができるABLASER(アブレーザー)などの優れた製品があります。これからもいろいろな技術を融合させた全く新しい工作機械の実用化を目指していきたいですね」

パーソナルデータ

メンバープロフィール

山本雄介 法山敬一

三菱重工工作機械株式会社
先端生産システム開発センター
制御システムグループ
2014年入社(キャリア入社)
工学研究科航空宇宙工学専攻修了

三菱重工工作機械株式会社
先端生産システム開発センター
制御システムグループ
グループ長
1992年入社
工学部電子工学科卒業

プロジェクトストーリートップ