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プロジェクトストーリー

6階建てのビルを載せたままで震度7を再現!世界最大の三次元震動破壊実験施設を生んだ最先端油圧技術。

防災科学技術研究所が兵庫県立三木総合防災公園に設置した「E-ディフェンス」は、
15×20メートルもの巨大な震動台をもつ世界最大の三次元震動破壊実験施設である。
最大1200トンの構造物を載せ、阪神・淡路大震災を上回る地震動をおこして破壊性状を研究することができる。
それを可能にしているのは、水平X方向に5台、水平Y方向に5台、垂直Z方向に設置された14台の強力な油圧式の加振機だ。
地震動を再現するには油圧システムの限界を超えなければならないが、その課題を彼らはどのように解決していったのだろうか。

 1995年1月17日に発生した兵庫県南部地震(阪神淡路大震災)は地震の怖さを改めて教えてくれた。そしてこのとき、新たな問題として浮上したのが、直下型地震で起きる想定以上の強い揺れだ。
 わが国では大きな地震が来るたびに建築物の耐震基準が見直され、1981年の建築基準法施行令改正で定められた「新耐震基準」により建物の安全は守られると考えられてきた。それにも関わらず、兵庫県南部地震によって多大な被害が生じてしまったことから、早急な対策が求められたのである。
「ところが、新たな耐震基準をつくるにしても、あるいは既存の建物への耐震補強を進めるにしても、大きな揺れに対して建築物がどんな挙動を示し、最終的に破壊に至るのかが分からなければ対処のしようがありません。そこで政府は地震を正確に再現して実験できる大規模施設の建設を決めたのです」
 そう語る高野健一は、試験装置の営業担当として、早くからこのプロジェクトに携わってきたひとりだ。
「政府の動きはかなり早く、地震があった1995年の秋には施設の設計と製造ができる事業者を募っていました。そこで三菱重工グループも応じることにしたのです」
 それまでも地震の揺れを再現できる施設はいくつかあったが、このとき計画されたものとは規模も性能も全く違う。
「それまでの施設では大きな構造物をそのまま揺らすことはできなかったので、縮小した模型で実験を行っていました。しかしサイズが違えば挙動も変わってくるので、正確なデータは得ることはできません。このため、新たな施設では最大質量が1200トン、テーブル(震動台)は15×20メートルという大きなものにすることが決まったのです」
 そして技術コンペなどを経て、1998年12月、三菱重工グループの受注が決まる。E-ディフェンスと呼ばれることになる施設の開発は、こうしてスタートした。

力強く、速く、そして精密に油圧を扱う最先端技術

 新しい実験施設に求められるのは、6階建て程度のビルであればそのままテーブルに載せて揺らすことができるほどの高いスペックだ。しかもXYZの3方向に動かし、震度7の大地震を三次元的に再現できなければならない。
「これほどの装置を製造できる会社はかなり限られています。大型構造物を得意とする三菱重工グループにとっても、そのハードルはかなり高かったのです」
 そう語るのは、システム設計を担当した小林恒夫だ。
「最初に、1200トンもの重量物が載ったテーブルをどう動かすか考えました。これだけの力を伝えるには油圧式のシステムしかありませんが、油圧は電動アクチュエータに比べると反応性に劣るので、地震のような速くて複雑な揺れを再現するのは非常に難しいのです」
 油圧による動力伝達システムは、比較的、小さなポンプで大きな力を出せるので大型の駆動装置に向いている。しかし、本来はジャッキや建設機械などの低速で動く装置に使われるものであって、震動を正確に発生させるのは得意ではない。しかも、地震動は単純な震動ではなく、0.5秒以下の極短周期のものから5秒以上の長周期のものまで混ざった複雑な揺れであるため、正確に再現するには精密な制御が必要だ。
「兵庫県南部地震クラスを再現するには、テーブルを3方向それぞれに秒速2メートルで1メートル以上動かさなければなりません。それを可能にするため、油圧システムを徹底的に見直したのです」
 ここで重要な役目を果たしたのがアキュムレータだった。小林の話は続く。
「アキュムレータは圧力を蓄えておくタンクで、ここに高圧の油を大量に貯めておき、一気に吐き出すことで短時間に大きな力を出せるようにしました」
 地震動は加速度、速度、変位の3つのパラグラフを制御することで再現していく。
「アキュムレータの応答性及び容量を高めたことで高速な動きから長周期の動きまでを実現することができました。あとは現場に据え付けてからきめ細かい調整を行い、あらゆる地震をシミュレーションできるようにしました。その結果、E-ディフェンスは規模においても性能においても世界最高の地震動実験施設になったのです」

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長周期地震動などの、新たなテーマにも応える施設として

 2005年から稼働を始めたE-ディフェンスは、所管する防災科学技術研究所がさまざまな実験に使用するだけでなく、外部の研究機関や企業にも利用してもらうことで多くの成果をあげてきた。高野が言う。
「私は日本の安全に貢献できると考えてE-ディフェンスのプロジェクトに全力を注いできましたが、完成してみると他の地震国からの関心も高く、海外の研究機関などが実験に参加されることも多くなっているようです。そういう意味では世界の安全に貢献できたのだから、喜びはより大きくなりました」
 地球上で起きるさまざまな地震動を再現できることから、最近では新たな研究テーマにも利用されている。
「長い時間大きく揺れる長周期地震動にも対応できるので、その対策を検討するための実験も行われているようです」
 長周期地震動が起きるとビルが長く、大きく揺れるので、室内の設備が転倒・移動したり、エレベーターの故障などが起きることがある。2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)のときに新たな問題として浮上してきたが、実験の自由度が高いE-ディフェンスは、そんな新しい要望にも応えている。
「長周期地震動については、サーバなどの室内設備が動くことで中にいる人に被害が及ぶケースも考えられ、今後、安全のための基準などが定められていくと思います。自分たちのつくった施設がその役にも立つのですから、本当にうれしいですね」と高野は微笑んだ。

研究機関の要望に応え、新たな試験装置を発明したい

 高野は営業、小林は技術と担当する仕事は違うが、お互いに共通する思いがある。
 高野が言う。
「私たちが扱っている試験装置は、最初から製品があるわけではありません。研究機関や企業などが『こんな実験がしたい』と考えたとき、その要望に応えて仕組みから創りあげていくものです。だから営業であっても、ものづくりに深く関わっているという実感があり、製品に対して強い思い入れがもてるのです」
 さらに顧客と何度も話し合い、じっくりつきあいながら装置を完成させていくため、人の魅力に触れられる仕事でもあるという。
「お客様と親しくなっていくことで、潜在的なニーズまで分かるようになり、こちらから提案していくこともできます。そうやって、世界に前例のない新しい試験装置を次々と生み出せていければ楽しいですね」
 新たな装置の開発は、小林も強く望んでいる。
「私は技術者として、油圧の可能性をもっと広げていきたいですね。E-ディフェンスの開発によって、これだけの大きさのものを、こんなに正確に震動させることができたのです。まさに従来の油圧の概念を超える成果であり、これを発展させていけば新しい発明につながるような気がしています」
 今後は国内だけでなく海外の研究機関などにも積極的に働きかけていきたいという。
「油圧を精密機器のように動かす技術を確立できたことで大きなアドバンテージを得ました。その強みを活かせば、可能性は広がっていくものと期待しています。

パーソナルデータ

メンバープロフィール

高野健一 小林恒夫

三菱重工メカトロシステムズ株式会社
営業本部
油圧・機械営業部
一般機械営業課
試験装置チーム
試験装置担当課長
1995年入社
経済学部経済学科卒業

三菱重工メカトロシステムズ株式会社
油圧・機械事業部
技術部
システム設計課
試験装置チーム
上級主任
1998年入社
工学研究科機械システム工学分野修了

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