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いつでも夢を

勝呂 幸男(三菱重工業株式会社 風力発電事業ユニット)

 昨年当協会は30周年を迎えた。30年の日本の風車史を見ると,先達の努力と創意工夫には大いに感銘を受けた。温故知新の言葉の通り,先達の足跡から大いに学ぶところはあるが,ともすれば私たちは先達の技術に頼りすぎているのでは無いかとの反省が頭を横切った。 今日の風車の栄光は実は私たちの先達のものであり,私たちにはその技術を元に新たな進歩が課せられているのではないだろうか。
 現在の環境問題とエネルギー問題の解決が私たちの大きな課題で,その両者を解決しながら世界に少しでも貢献できる,風力発電とその技術を適用し新しい社会構造を作り上げることこそ私たちの課題ではないかとの思いに至った。
 わが国のように原材料の少ない国は明治の開国以来(江戸時代は鎖国ではなかったと異説も在るがここではそれをおいておくが),原材料を輸入し,それを加工することで付加価値をつけ,国を興してきた。 多くの技術を導入し,新しい技術を開発し,改良することでわが国の経済発展が進んできたことは論を待たないことと思う。その結果国内の技術が進歩し,付加価値が上がり,国民生活の向上が図られてきたが,一方で否が応でも国際化の中に押し込まれ,金融市場の中の一メンバーとしての活躍の場が増えるとともに,結果として必然的に賃金が上がり,工業製品の競争力が失われてきた。 日本のあった工場はBRICsと呼ばれる国を中心とする発展途上国に移り,かつて米国で言われた工業の空洞化が著しいものとなっている現状である。
 私たちは自然エネルギー,再生可能エネルギーに取り組むことでこれらの問題を解決しようと考えてきたし,今後も特に風車を通してまず問題解決に取り組んでいくことに誤りはないように見える。 再生可能エネルギー技術には多くのものがあるが,風力発電を超える潜在能力の高いものはないと信じている。原子力発電では廃棄するために多くの費用が必要といわれているし,水力発電は地勢を変える。
これら各技術を考えると,私たちは風車を通じて再生可能エネルギーの循環社会の構築に貢献できると思われる。即ち,風車で水素を発生させ,その水素をいろいろな形で輸送し,動力源としての燃電池に供給し発電することで,完全に排出ガスの削減が可能になることは明白である。
 ここで私たちは世界にそれほどの風資源は在るだろうかという疑問が出てくる。これは,今まで省みられていなかった地域,即ち社会資本がなく,人口の少ない地域で風の強い地域と考えられるところを探す必要がある。それこそ風車設置の第一歩でありここに私たちの技術が生かす事が出来よう。
 しかしわれわれは既にその場所を見つけたのである。それは即ち,アルゼンチンの南部地方で,南極回りの風が循環する領域で唯一の陸地がパタゴニア地方である。私たちは水素エネルギー協会とともに3年間の調査を行うとともに,簡単なエネルギー附存量の試算を足利工大風力エネルギーシンポジウムで報告した。 そのエネルギー量はわが国の電力エネルギー量の10倍,自動車で言えば8億台(地球上の車の数の10倍)のエネルギーがあることが分かった。勿論,今後,精査な検討を行うことで多少の変動はあろうが。
 今後の百年の計を今私たちが考えておかないと,「後世にきれいな地球を残そう」という標語も,後世から,「嘘つきな人たちの時代」と評価されてしまう。 いま,国内外で風車は多くの事故が発生し,その技術力や信頼性に疑問が投げかけられているが,今はこのような不信感の発生をわれわれの技術力で克服し,前述のような,後世に「あの時代の人たちはわれわれのためにきれいな地球という大きな遺産を残してくれた。」と評価されるような世代になりたいと思う。 今こそその第一歩を踏み出す必要があると思われる。
 巷間,炭素排出権や取引話が飛び交っているが,年間数十億円,数百億円といった炭素排出権のために使われるのであれば,即ち再生されない金を払い続けるとこを考えると,新しい技術に優先的に,資金と人を投入し,再生可能な技術力を積み上げ,人から人へその技術が伝わっていくような社会を作ることがわれわれに課されたそして一番重要な方向ではないであろうか。
 私はサユリストではないので表題は少し違和感があるが,少なくとも風力発電が今日直面する各種の問題を乗り越え,新しい技術,他の新しい技術と組み合わせて世界の人たちに貢献できると方法を推進するためにはいつでも夢が必要と思うし,叉持ち続けて生きたい。