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三菱風車の歩み

三菱重工業株式会社 原動機事業本部 タービン技術部
上田 悦紀

1.三菱重工の風力発電の歴史
 三菱グループの起源は江戸時代末期の海運会社に遡ります。明治時代の富国強兵の波に乗り、事業範囲と規模を拡げて三菱重工が誕生しました。 この出自から三菱重工は社会インフラの維持に強い使命感を持った会社になりました。エネルギー分野にも目先の採算を度外視して取り組んでいます。 風車の製作も最近のように風力発電が脚光を浴びるはるか以前の1980年に始めています。三菱風車の歴史はヨーロッパの風車メーカの大半より長いのです。
 国産風車第一号はヘリコプターの中古の羽根を使った40kW風車でした。この羽根の根元に延長管をつけて出力を250kWまで拡大しました。 次の一歩は風車ブレードの自主生産でした。下関造船所で作っていたヨットの製造技術を転用して、ガラス繊維強化プラスチック製(FRP)の風車ブレードの自社生産を始めました。 そして1987~1991年にはアメリカのカリフォルニアのモハベ砂漠に275kW風車を660台、1993年にイギリスのウェールズに300kW風車を103台納入して、最初の成功期を迎えました。
 チエルノブイリ事故と酸性雨の反省から、1990年代後半に欧州を中心に環境保護の声が高まりました。ドイツでは緑の党が政権入りし、どんどん風力開発が進むようになりました。 それに伴い風車も急速に大型化しました。日本でもNEDO開発研究で500kW風車が開発され、三菱重工はそれを発展させて1999年に国内初の1000kW、2003年に2000kW、 そして2006年初頭にはロータ直径92mで定格出力2400kWの風車を横浜工場(金沢地区)に建設しました。(写真)
(参照:風車の大型化/三菱) 三菱風車の納入実績も2005年末で2000台/1200MWを突破しました。この数字は日本全体の風車の台数/出力より多いです。

2.世界の風力発電の動向
2005年2月のCO2削減を定めた京都議定書の発効に象徴されるように、風力発電には追い風が吹いています。2004年の新規導入量は約800万kW、累積では約5000万kW(原子力発電所で約50基)にまで成長しています。(参照:風力発電の導入量/世界)ロータ直径が100mを越える超巨大風車、何百台の大型風車が並ぶウィンドファーム、更に洋上風力発電と、更に規模の拡大が続いています。これに伴い風力開発は、何百億円もの巨額の資金の動くビッグビジネスに変貌しました。
変化はまず風車オーナの変化として現れました。昔は個人や協同組合が数台ずつ風車を建てることが多かったのですが、最近では風力発電会社が銀行から多額の資金を借りて何百台もまとめて風車を建てたり、電力会社が自ら風力発電を手がける方式が主流になってきています。
その影響は風車メーカにも響いてきます。銀行や電力会社は倒産リスクを嫌うので、規模の小さい風車メーカは大型風力開発から締め出される結果となり、商売が傾いてゆきます。世界的な重電企業の風力発電参入(GEが2002年、Siemensが2004年)がこの変化を決定的にしました。伝統的な風車メーカの合併や買収が相次いでおり、最終的には大手数社に集約されそうな勢いになっています。三菱重工もアジアの重電企業の代表として、その一翼を担うべく努力を続けています。

3.日本の風力発電の将来
日本でも風力発電は急成長を続けています。2005年末時点で約1000台、約100万kW分の風車が全国に建っています。(参照:風力発電の導入量/日本)しかしまだ電力需要に占める風力発電の比率は約0.1%と小さく、まだまだ拡大の余地があります。因みにこの比率は風力先進国のドイツでは5%以上、デンマークは約15%と、日本の数十倍も大きいのです。
既存の送電線への系統連系の制約、自然公園や保安林の法的規制、景観や希少鳥類への影響など、解決すべき課題はもちろんあります。また、国土が平坦で安定した偏西風が吹き、緻密な送電網を持つヨーロッパと、山がちで起伏が多く、気まぐれな季節風と激しい台風のある日本を同列に扱って、「日本は遅れている/努力が足りない」と批判するのも科学的とは言えません。しかしながら、既存の火力発電や原子力発電に取って代わるには至らなくても、風力発電が日本の風土に根ざした貴重なエネルギー源として、電源構成の一部を担ってCO2削減に貢献するのは間違いありません。
それが早いか遅いかは、我々自身が環境のためにどれだけ真面目に取り組むかにかかっています。政府の目標は「2010年に300万kW」ですが、その先を決めるのは世論の力です。

4.今後、三菱風車が目指すこと
三菱重工は、火力・ガスタービン・原子力・地熱・水力等の色々な発電機器の製造を手がけてきました。従来の火力発電(最近はガスタービンコンバインドサイクル発電)という化石燃料依存だった発電方式は今、再生可能な自然エネルギーに大きく切り替わろうとしています。三菱重工は下図に示すとおり、10年後の世界を先取りして、今後は風力発電と太陽光発電に力を入れていきます。
「有力な風車メーカが日本にある」ことには、風力発電分野での日本の発言力向上、新規産業による雇用創出、日本のエネルギー安全保障など、色々な価値があります。三菱重工は国内唯一の大型風車メーカとして、これからの世界と日本の風力発電の発展に貢献したいと考えています。
もちろんそれは平坦な道のりではありません。大型台風の連続襲来や頻発する冬場の落雷など、時には自然の猛威の前に一敗地にまみれることがあっても、我々はくじけません。失敗から学んでより良い風車を作り、日本の気候風土に適した信頼性の高い風車を提供します。更にそれによって日本のエネルギー確保と環境保護の双方に役立つことが、社会インフラを担う企業としての責任であると考えています。

三菱風車 今後の導入量