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世界初 300mm対応の3次元集積化LSI用常温ウェーハ接合装置を開発
産業技術総合研究所に初号機納入

発行 第 5156号
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 三菱重工業は、3次元集積化LSI(大規模集積回路)が製造できる300mm(12インチ)対応の全自動常温ウェーハ接合装置を開発し、初号機を独立行政法人産業技術総合研究所(産総研)に納入した。LSI用で主流サイズとなった300mmの大口径ウェーハを立体的に積層できる常温接合装置の製品化は世界初。加熱による劣化がなく生産性も高い利点を活かし、微細化の限界にあるLSIの大容量化や高性能化、低コスト化に貢献していく。

【常温ウェーハ接合装置<br />BOND MEISTER MWB-12-ST】

 300mm対応の全自動常温ウェーハ接合装置「BOND MEISTER MWB-12-ST」は、接合面を活性化するための照射ビーム源として、FAB(Fast Atom Beam)ガンを搭載している。FABガンから照射されるアルゴンの中性原子ビームは、アルゴンイオンビームが照射されるイオンガンに比べ、1粒子当たりのエネルギーが約20倍と高く、常温接合の妨げとなる金属表面を覆った酸化膜も強力に除去できる。接合時の加重は最大20トン。

 同装置は、300mmウェーハ5枚を連続的に接合できるほか、ウェーハの搬送、アライメント(接合するウェーハ同士の位置合わせ)もすべて自動で行える。さらに、接合ウェーハに対して、あらかじめ接合条件を個別設定できるため、多品種少量生産も容易。

 産総研は、産業技術分野における最先端の研究機関で、日本起源の技術である常温接合プロセスに関しても多くのノウハウを蓄積している。産総研でMWB-12-STの初号機が活用されることにより、半導体関連産業界の技術発展に対する大きな貢献が期待できる。

 常温ウェーハ接合装置は、イオンビームや原子ビームを真空中で材料表面に照射することにより接合面を活性化し、従来は加熱して接合していたシリコンなどの原子同士を室温で接合する装置。熱ストレスやひずみを排除して、強固で信頼性の高い結合を作り出すことができる。加熱・冷却時間を省けることに加え、アライメントの自動化による大幅な工程の短縮と高い歩留まりで、デバイス製造コストの低減を実現する。

 2006年に販売を始め、これまで200mm対応の3次元集積化LSI用まで製品群を拡充。MEMS※製造分野の需要に幅広く応えられる体制を整えてきた。今回、ICチップの低コスト大量生産につながる300mmウェーハに対応した機種を加えたことで、需要が多く価格競争も激しいメモリーやMPU(超小型演算装置)の製造ニーズにも対応できるようになった。

 電子機器で進む小型化・高機能化を支える大容量かつ高性能なLSIの製造において、微細化により平面上(2次元)で集積度を高める手法は限界を迎えつつあり、打開策として3次元集積化技術への期待が高まっている。3次元集積化LSIの製造では、積層ウェーハ間で信号を授受する貫通電極同士を高い信頼性で接合する技術がポイントで、積層を繰り返しても熱による劣化がなく高いアライメント精度が確保できる常温ウェーハ接合技術は、優位性が高い。

当社は同技術を3次元集積化LSI製造分野でキーテクノロジーとして普及させるため、提案型アプローチを積極化。今月18~20日に東京ビッグサイトで開催される「第13回半導体パッケージング技術展」にも出展し、装置拡販に弾みをつけていく。

※ Micro Electro Mechanical Systemsの略で、微細加工技術による超小型のセンサーやアクチュエーターなど。自動車のエアバッグ用加速度センサーやプリンターのインクジェットヘッドなどが代表例。


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