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三菱重工ニュース
2002年8月8日発行 第4022号

ニューラルネットワークを産業機械に
学習推論機能のワンチップ化に成功 高速処理を実現


 三菱重工業は、人工神経回路網(ニューラルネットワーク)※1と進化的計算エンジン※2をワンチップ(FPGA※3)化し、パソコンの20倍の性能を持つ学習推論チップの開発に成功した。人と同じように自ら学習能力をもち、知的水準を高めていくことができるニューラルネットワークは、夢のコンピューターとして世界で開発が進められているもの。ニューラルネットワークと進化的計算エンジンをワンチップ化したことによって、高度知能化が要求される産業機械など、各種の機械への組み込みに道を開いたことになる。

 今回は、基本動作を検証するため、大規模FPGAを用い、ここにRBF(Radial Basis Function)※4とGA(Genetic Algorithm)※5を組み込んだ。
 ワンチップという制約の中で効率よく演算を行い、学習・推論処理の高速化をはかるためRBF処理のスレッドパラレル化※6、プロセッサのロングパイプライン化※7などの工夫を施した。

 当社で行った動作検証で、800MHzのペンティアムIII搭載のパソコンに比べ20倍以上の高速で学習推論機能を実行することができることを確認した。

 現在、コンピューターはいろいろな分野で使われ、高速演算にとくに効果を発揮しているが、最近は人の頭脳と同じ情報処理のできるコンピューターが求められるようになってきた。国際的に研究が進められているのがニューロコンピューターで、人間と同じ神経細胞の回路網=ニューラルネットワークを組み込むことで、判断、予測のできる賢いコンピューター。

 ニューロコンピューターは進化機能を組み込むことで環境の変化に対応しながら生きていくことができ、(1)コンピューター自身が学習を重ねながら成長していく(2)あいまいな情報でも推論を繰り返し正しい回答を出す(3)回路の一部が壊れたら自ら修復する、など現在のコンピューターとは異なった機能をもつ。

 今回のワンチップ化は、こうしたすぐれた機能を機械に取り込み、機械のIQの向上を図ることが狙い。モノ作りの原点ともいえる熟練工や匠といわれる人たちの技術の伝承もこれまで以上に容易にでき、産業界の課題となっている生産の空洞化防止にも寄与することになる。

 当面、当社産業機械向けに実用化をはかっていく方針であるが、(1)ノウハウの機械への取り込み(2)不良品や故障の発生予知(3)環境や機械に適した運転方法の最適化などが実現できるようになる。


※1.人工神経回路網 ニューラルネットワーク。脳の基本となっている神経細胞のことをニューロンといい、細胞が結びついてできた神経回路をニューラルネットワークという。このニューラル・ネットワークの仕組みを利用したコンピューターをニューロコンピューターという。
※2.進化的計算エンジン ダーウィンの進化論をもとにした各種問題解決戦略(手法)の総称。遺伝的アルゴリズムもこの中に含まれる。
※3.FPGA Field Programmable Gate Array。ユーザーが書き換え可能な集積回路。
※4.RBF 動径基底関数。ニューラルネットワークの一種。構造が簡便で、処理が比較的高速であるため、広く応用されている。
※5.GA 遺伝的アルゴリズム。生物の進化の過程をまねることでパラメーターの最適化を図る手法。
※6.スレッドパラレル化 処理をあるまとまった単位(スレッド)に分け、その単位を複数の演算器で並行して処理する方法。スレッドに分けることで、処理効率を上げることができる。
※7.ロングパイプライン化 パイプライン化とは、工場の流れ作業で使うベルトコンベヤーにあたるもので、一つの処理を逐次的に分担する処理方法。分担することで処理の高速化を図れるが、ある程度まとまった仕事を与えないと逆に効率が下がることになる。そこで、スレッドパラレル化(※6)と組み合わせることで威力を発揮することができる。

 



担当窓口
技術本部 名古屋研究所


以  上