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三菱重工ニュース
2002年1月23日発行 第3973号

画像処理を用いた金属の寿命診断システムを開発
従来の半分の時間で寿命を予測


 三菱重工業は、パソコンによる画像処理を採り入れることによって金属の寿命予測をこれまでのほぼ半分の時間(※1)で行う診断システムの開発に成功した。火力発電設備の劣化診断に用いるために開発したもので、システム名は「Auto-MLAS」。今後、実プラントで実証試験を行っていく。

 金属の劣化診断は、これまで主にクリープボイド(※2)と呼ばれる結晶の境界にできる空洞と、金属組織学的な変化(※3)を検査員が観察して行っている。当社は金属の組織変化に着目した非破壊余寿命診断法「MLAS」(※4)を1987年に実用化し、国内外の100基以上の発電設備で使用してきた。

 ただ、この方式ではクリープボイドの判定に電子顕微鏡が必要であり、いったん持ち帰っていたため評価に時間がかかっていた。

 今回開発したシステムは、現地への携行が可能な高精度デジタル顕微鏡とパソコンによる画像処理技術を組み合わせることによって、短期間に客観的な評価ができるようにしたもの。

 画像処理では、2値化(※5)と形状度効果(※6)を考慮し、金属組織の境界にできる空洞と、金属組織の面積比を正確に認識する技術を確立し,これを組み込むことにより,検査員が評価の決め手とする現象をそのまま取り出すことが出来るところに最大の特徴がある。
 また撮影の際の明るさに対する統計的な判断手法(※7)を組み込むことにより、撮影した顕微鏡写真の明るさに影響されず構造を認識することができるようになった。

 画像処理はすでに文字や顔の識別、きずの外観検査などいろいろな分野で用いられているが、構造の複雑な顕微鏡画像で、人が着目する現象による定量評価を実用化した例は少ない。
 この金属の診断システムは当社高砂研究所と長崎研究所が共同で開発したもの。火力発電設備の経年劣化は設備の安全性・信頼性を脅かす大きな問題となっており、信頼性が高く、しかも短時間で結果の出せる寿命評価システムの開発が待たれていた。


    ※1. ほぼ半分の時間
       
ボイラー耐圧部の標準的な検査の場合、従来の50%以下に短縮することが期待できる。
    ※2. クリープボイド
        クリープ損傷(材料成分の熱拡散に起因する変形や破壊)の後半段階に顕著に現れる、金属結晶境界部の空孔のこと。空孔が結合し境界全体に広がって亀裂となる。
    ※3. 金属組織学的な変化
        クリ-プ損傷の過程で生じる析出物(金属中に分散している微小な粒子)の形態の変化や亜結晶粒(結晶の粒子内に存在する金属の構造の単位)の形態の変化。
    ※4. MLAS
        Mitsubishi Metallurgical Life Assessment System
    ※5. 2値化
        画像中の各画素の明るさの度合い(輝度)に応じて、観測対象であるらしい部分と、そうでない部分とに分けること。すなわちデジタル化すること。
    ※6. 形状度効果
        観測対象がそもそも円形なのか線形なのか等、おおよその形状を考慮することによる精度向上の効果。観測対象の大きさ、アスペクト比(縦横の比)、球状度などの形状因子が、劣化評価に及ぼす効果のこと。
    ※7. 統計的な判断手法
        金属組織の境界(結晶粒界)は、光学顕微鏡で観察すると長い黒線で構成され、結晶粒内部の亜結晶粒の境界は比較的短い黒か灰色の線として現れる。顕微鏡画像からこうした線を安定して認識するために、画像全体の明るさとの関係で線を抽出する黒さの基準値を自動設定できるようにした。さらに劣化に応じて内部の線が不明瞭になる(短くなる・色が薄くなる)点に着目し、一定以上の不明瞭な線を除去するための線特徴判別機能を組み込んだ。


 

担当窓口/技術本部 高砂研究所・長崎研究所

以  上