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HOME 株主・投資家の皆様へ オンライン MHIレポート 2016 経営戦略 CTOメッセージ

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強みとするエンジニアリング力の横断的な活用により、課題の克服と競合との差別化を推進していきます。 取締役 常務執行役員 CTO 名山 理介

CTO(Chief Technology Officer)の主な役割

三菱重工グループでは、それぞれの事業が権限と責任をもって自律的かつ機動的に経営ができるよう、分社化を進めてきました。こうして生まれた事業会社や独自経営合弁会社がそれぞれ成長戦略を描き規模の拡大を図っていますが、それにより当社すなわち三菱重工本体からの遠心力が強くなってきています。本来、当社グループ全体で一定の事業規模をもつ意義は、信用力や資金力に加え、何よりも技術における総合力にありますので、こうした状況への対策として、当社の求心力を強化し、独立経営合弁会社も含めたグループ全体の幅広い技術を共有していかなくてはなりません。

その中心的な役割を担うCTOは、各事業の技術力を結集し、グループ全体へ技術の融通と供給を指揮していく、司令塔のような存在と言えます。また、全社視点で技術開発に関するリソース配分を行うのも重要な役割です。2016年4月からは、管轄下にシェアードテクノロジー部門が発足し、CTOの権限と責任範囲が広がりました。本部門の発足によって基盤となるコア技術の支援を広げ、「目指す企業像」で掲げる「たゆみない技術力の強化と研鑚」のさらなる推進が可能になりました。

顕在化したリスクに対する認識

近年、発電プラントや客船プロジェクトなどにおいてさまざまな問題が発生していますが、決して当社の技術力そのものが衰えたわけではないと考えています。関西電力(株)姫路第二火力発電所3号機および5号機蒸気タービン損傷事故では、最新鋭の技術を適用した蒸気タービンに不具合が発生しました。お客さまをはじめ関係者の皆さまには多大なご迷惑をお掛けしましたが、これから世界を舞台に成長していくためには、最先端技術を採用した製品開発に挑戦することを止めてはならず、挑戦したこと自体は間違っていなかったと認識しています。

一方、米国カーニバル傘下のアイーダ・クルーズから受注した大型客船の建造の遅れは、姫路第二火力発電所の損傷事故とは異なる問題を含んでいます。今回の客船は、燃費や速度などの基本性能においても最先端を追求した難易度の高いものでしたが、それについては事前にリスクを見積っており、実際にクリアしています。しかし、客船のようにさまざまな設備をもちエンジニアリング要素のウェイトが高いプロジェクトについては、これまでの船舶だけの経験でこなすことができるか、リスクの見極めが十分でなかったと考えています。新たな挑戦をするときに、何をリスクとして認識し、どのような対策を講じていくことが重要なのかという判断が足りなかった点は、大いに反省しなければなりません。

エンジニアリング力の強化によるリスクの低減と差別化戦略

客船問題は、プロジェクトマネジメントにも課題があったと認識しています。本件において必要とされたマネジメントは、プラントを建設するEPC(設計、調達、建設)で求められるエンジニアリング能力と本質的には同じだと考えています。プラントエンジニアリングでは、プロジェクトの遂行にはQCD(品質・コスト・スケジュール)の状況を定量的に把握することが必須となりますが、客船プロジェクトでは、そのエンジニアリングの手法を活かし、客船にマッチした遂行管理が十分に行えませんでした。当社には、エネルギー・環境ドメインのように高度なエンジニアリング力をもつ事業がある一方で、単品の製品を製造している事業もあり、事業間のエンジニアリング力には差があります。この差を補うためにエンジニアリング本部を立ち上げました。

エンジニアリング本部は、エネルギー・環境ドメインの化学プラントおよび社会インフラ事業と、交通・輸送ドメインのエンジニアリング事業が保有しているEPC遂行機能を集約しています。化学プラント、交通システムなど多岐にわたる事業領域によって培われてきた方法論やリソースを事業間で横通しすることで、プロジェクト管理能力の高度化と効率化が可能になるという発想です。そしてエンジニアリング力の全社的な底上げは、プロジェクト全体のリスクを低減させるだけでなく、各事業の利益拡大に向けた成長の原動力になると考えています。

これまで当社グループはさまざまなエンジニアリング事業において、機器をお客さまに納入するだけでなく、建設にも携わってきました。海外大手競合の中には、どの業態の顧客にも同様のシステムを提供し、ハードウェアよりも情報処理自体を売りにするようなビジネスへ移行を図る企業もありますが、当社は一貫してEPCを主要な事業領域の一つとして、重点を置いてきました。お客さまの要望や協業相手の意見を聞いてプロジェクト全体を取りまとめ、調整していくことは、当社のビジネスの本質と言えるほど根付いており、今後は、さらにこの特性を磨いて強化していくことが重要な戦略となります。

エンジニアリング本部を中心に三菱重工グループ全体のエンジニアリング力を強化

シェアードテクノロジー部門のビジョン

シェアードテクノロジー部門は、エンジニアリング本部に加え、新たに発足したマーケティング&イノベーション本部とバリューチェーン本部、既存のICTソリューション本部と総合研究所で構成されています。以前は、各事業の共通リソースを活用する役割をもっていたのは、知的財産部、ものづくり革新推進部などを含む技術統括本部のみでしたが、シェアードテクノロジー部門では、そういった技術的支援に加え、生産性の向上、サプライチェーンマネジメントの最適化も含め、バリューチェーン全体のレベルアップを図ることを目的としています。特にマーケティング&イノベーション本部は、お客さまのアカウントマネジメントを通して市場動向を全社的な視点で観察し、今後どのような技術を開発していけばよいのか、どのような技術をもつ企業と協業していくべきなのかなどを検討しています。そのうえでシェアードテクノロジー部門全体で、新たな事業の枠組み、そして設計、工作、調達、開発、ICT(情報通信技術)と、製品やサービス全体の枠組みを企画し、技術面でグループ全体をリードしていくというのがビジョンです。

自律的な経営を促進するためにグループ会社を独立させたわけなので、このようなコーポレート機能は不要ではないかという考えもあるかもしれません。だからこそシェアードテクノロジー部門は、集約した知見やリソースをもとに、情報やサービスを提供するなど各事業部門に価値をもたらさなければなりません。私だけでなく、各部門から異動してきた従業員を入れ替えながら考え方を共有し、当社グループ全体で総合力を発揮していけるかどうかは本部門の働き次第で決まるため、使命感をもって取り組んでいます。

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その意味では、総合研究所を参考にしたいと考えています。実は総合研究所は予算の8割以上は各事業部門からの発注で成り立っている、いわば仮想経営を行っている組織です。提供するサービスや研究成果の品質が高くないと受注が伸びず、人材を減らすなどの経費削減が必要になるため、自ずと改善の作用が働くようになっています。もちろん研究開発においては自発的な先行投資も必要なので、バランスをとるために予算の2割程度はコーポレートから出ているのですが、このような経営的発想をシェアードテクノロジー部門にももたせたいと考えています。

エンジニアリング本部とシェアードテクノロジー部門の具体的な説明は、技術基盤をご覧ください。

AIの活用と技術のグローバルな横通しが中長期的な課題

今後の中長期的な成長を見据えると、とりわけAI(人工知能)はブレイクスルーをもたらすことができる破壊的な技術であり、無視するわけにはいきません。ただ、AIは世界中で研究されているテーマでもあり、自社開発で新技術を生み出すのではなく、外部で生み出された新しい技術を他社に遅れずに取り入れ、活用していく方針です。AI技術では、製品に組み込む「制御システム」への適用だけでなく、「業務プロセス」への活用拡大にも注目しています。今後はバックオフィスだけでなく設計や製造現場の業務もAIに代替されていく可能性があり、当社もどのようにAIが活用できるか研究を進めています。将来的には得意とするエンジニアリング領域においてもAIを導入し、さらなる生産性向上やリスク低減を図ることで競争力を高めていく考えです。

一方、国内と比べて、海外に軸足を置いている事業会社は技術の横通しが十分に進んでいないので、将来に向けて改善の余地が大きいと感じています。海外の大学と連携したオープンイノベーションは着実に増えてきているので、当社グループにおける国内と海外の技術リソースの融通を進めていくことが、今後の課題だと認識しています。

IoT/AIの活用イメージ

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