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HOME 株主・投資家の皆様へ オンライン MHIレポート 2016 価値創造の仕組み構築 鼎談 ―グローバル成長に必要なリスクマネジメントとは―

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鼎談 グローバル成長に必要なリスクマネジメントとは 当社が真のグローバル企業へと成長するうえで避けられない課題となっているリスクマネジメントを主なテーマに、CEOの宮永、社外取締役の篠原氏、社外取締役監査等委員のアメージャン氏が意見を交わしました。

取締役

篠原 尚之 氏

東京大学 政策ビジョン研究センター教授
1975年に旧大蔵省に入省。同省の国際局長、財務官を歴任後、2010年2月に国際通貨基金(IMF)特別顧問に、3月には副専務理事に就任。2015年2月に退任し、7月より現職。当社においては2015年6月に取締役に就任。

取締役 監査等委員

クリスティーナ・アメージャン 氏

一橋大学大学院商学研究科教授
コーポレート・ガバナンスや、グローバリゼーション、資本主義システムなどが専門研究テーマ。コロンビア大学ビジネススクール助教授を経て、現在は一橋大学に勤務。当社においては2012年6月に取締役に就任。2015年6月より取締役監査等委員。

現在の取締役会についての印象

アメージャン氏

私が社外取締役に就いた4年前は、取締役会でリスクが議題に上がることはありませんでしたが、現在では、起きた事象に対する原因分析や対処方法、今後の防止策など、意義のある議論ができています。取締役会のアジェンダや議論の仕方が著しく変わり、充実してきたと思っています。

また、2015年度から監査等委員会に移行したことにより、少人数でリスクなどさまざまなことについて深い議論ができており、移行した意義は大きかったと感じています。

篠原氏

私は2015年度に社外取締役に就任しましたが、三菱重工の第一印象は、ものづくりに真摯に取り組む会社なのだということです。長崎造船所を視察し、従業員が非常に大きな熱意を持って業務に取り組んでいるのを肌で感じました。また、グローバル競争力をつけるために、執行側が試行錯誤して頑張っているという印象ももちました。競争力をつけるためには挑戦が必要であり、そこにはどうしてもリスクが伴います。この1年間の取締役会では、そうしたリスクが顕在化した案件に関する議論に多くの時間を費やしました。

宮永

以前、当社は取締役会や経営会議の中で、各事業のリスクの本質について詳しい議論は行っていませんでした。それは、国内や東南アジアなど、当社がプレゼンスをもった市場、つまりある種の予定調和の範囲にとどまった事業展開だったことが背景にあります。事業を撤退するのは、構造的に需要が縮小した、またはコスト構造が見合わなくなったなど、いわば事業や製品の寿命が尽きたときに、それぞれの責任者が判断していました。それが最近はグローバル市場に本格的な進出を図り、競争が激化したことや新事業への挑戦が増えたことに伴って、事業リスクを経営レベルで総合的に判断する必要性に迫られるようになりました。

私が特に気をつけているのは、見えているリスクや起こっている問題をできる限り社内、特に取締役会でオープンにすることです。また、例えば株主、投資家、アナリストへの説明など、社外に対しても透明性を保つようにしています。

透明性を保つことでリスクマネジメントが磨かれる

アメージャン氏

私も特にこの1年間で本当にオープンになったと思います。それを象徴していたのが2015年度の株主総会の説明です。ほぼノーシークレットの内容だったので、かつての三菱重工からカルチャー・チェンジが起きていると感じました。ただ、日本では情報開示に前向きでない企業が一般的なので、三菱重工が透明性を高めることで、相対的にリスクや問題が多い企業だと思われてしまっているところもあるかもしれません。

宮永

企業経営をしていると、過去の判断が間違っていたと後で分かることもあるのですが、それを隠したりごまかしたりせず、その時点でどういった方針や戦略に基づき、どういった判断基準と理由で意思決定し、どういった結果が生まれたのかを真摯に説明しなければいけないと思います。さらに、「それに備えて、こういう準備をしていました」と言えるとなお良いのですが…。そうやって透明性を保ち、わかりやすく説明ができる状態にしていくこと自体が、リスクマネジメントとしても大切だと考えています。

篠原氏

問題点を社外に説明して透明性を大切にしていくという姿勢は、日本の一般的な他企業よりも積極的だということが、この1年間でよくわかりました。

ただ、客船事業による大きな損失計上が示す通り、リスクマネジメントに問題があったのは確かであり、悪かった点はやはり真摯に反省しなければいけません。マネジメントシステムの何が悪かったのか、将来のシステムをどう改善していくべきか、この経験をどう活かしていくのか、すでに社内で侃々諤々(かんかんがくがく)の議論を行っていることと思いますが、徹底的に検証すべきと考えています。

宮永

これまで技術で日本一の企業だという自負があったために、リスクマネジメントについても我々の手法が正しいのだという過信につながっていたかもしれません。実際には、事業特性上、マネジメント手法を確立させることは簡単ではありません。例えば、自動車会社のリスク対応というのは世界の自動車産業の歴史の中でスタンダードが確立され、さらに環境や消費者保護の問題への対応による進化を続けています。しかし、我々のような非常に大型の受注案件を扱うB to B企業は、顧客対サプライヤーという個別の契約によるところが大きく、リスクマネジメントのスタンダードがあまり存在しません。

また、欧米の企業は事業やプロジェクトにおける一定のリスクが判明した時点で割り切って撤退などの合理的な判断をすることが多いですが、日本では組織のモラルや雇用責任、技術伝承などの問題があり、組織内コストや社会的コストが大きく、撤退という対応を即断することは難しいという側面もあります。

宮永

とはいえ「難しいから仕方ない」と言っていては改善が進みません。我々の事業にはどういった特殊性があり、どこまでリスクを計算できるのか。海外の競合はどういった歴史的背景や財務基盤をもってベストプラクティスを確立していて、それに対して我々は何があれば肩を並べられるようになるのか。そういった、定量的な計算と具体的な仮説検証を行って、社内外で説明をしていけば、リスクマネジメントは進化させられるはずです。

リスクをとれる人材の育成

篠原氏

誤解してはいけないのは、リスクは必ずしもネガティブなことではないということです。ある程度のリスクを受け入れながら挑戦を続けていくことは、日本を代表するものづくり企業としての宿命です。そういったリスクをどうやって定義し、管理していくかが重要なのであって、リスクの発生自体を恐れてはいけないし、ひるんではいけません。

アメージャン氏

世界一の企業を目指すのであればリスクをとることも必要です。リスクマネジメントは、リスクアボイダンス(回避)とは異なります。健全なリスクのとり方というのは、実に重要な課題だと思います。

宮永

そういう意味で、持続的にリスクマネジメント力を上げるためには、減点主義で人事評価せず、挑戦して失敗と成功を繰り返してきた人たちを登用していくべきだと考えています。また、技術的に難しい問題とビジネス面で難しい問題の両方を解決できる人材も貴重になってきます。そのために企業としてできるのは、早い時期から挑戦の場を与えて多くの経験を積んでもらい、その中から慎重さと大胆さを併せもつような人材を見つけ出し、そうした人材を重要なポジションにつけて、マネジメントをさせていくことだと思います。

人材の多様性の確保

篠原氏

人材の面で私が興味深いのはPrimetalsTechnologiesにおける人材の交流です。合弁相手であるシーメンス社(Siemens AG)はまさに競争相手であり、手本とすべき企業でもあります。リスクマネジメントをはじめとして、さまざまなビジネスプラクティスを彼らから学ぶ機会や、逆に三菱重工から学びを提供することができるはずなので、非常に鍛えられる場になるのではないでしょうか。

三菱重工は一つのプロジェクトに対して意識が集中しすぎてしまうきらいがあるのかもしれません。そのため、外部の客観的な目を入れる仕組みがあれば有効だと思います。つまり人材の多様化です。社内の人事異動も、プロジェクトに対する客観的視点を担保する手段と言えますが、シーメンス社のような提携企業の知見を取り入れて多様性を高めていくことはより重要な意味があると思います。

アメージャン氏

アメージャン氏

私は2016年3月にPrimetalsTechnologiesを訪問したのですが、国際的なM&Aを重ねてきたシーメンス社との合弁会社であるだけに、経営陣の国籍が日本、ドイツ、オーストリア、イギリスとさまざまで、これこそ多様性そのものだと思いました。日本企業の手法の長所・短所を議論するなどすばらしい経験ができ、三菱重工も将来このようになってほしいと感じました。

宮永

鉄鋼業が成熟するに従って、各国の製鉄機械会社が規模を縮小させながら集約していった企業の一つがPrimetals Technologiesであり、日本、アメリカ、イギリス、ドイツ、オーストリア、イタリアの6 ヵ国の知恵が集まっているのです。さらに中国やインドにもエンジニアリングスタッフがいます。いわば多様性の極致のような企業なので、リスクマネジメントの知見も含めて当社にとって最大の学びの機会としてコーポレートの若手社員を派遣しています。その経験が将来の経営に活かされることを期待しています。

社外取締役への期待

宮永

社外取締役の皆さまにもっとも期待していることは、率直な質問です。我々も最大限の説明をしているつもりですが、それでも理解や納得ができない点について、どういう観点からおかしいと感じるのかを教えていただきたいと思っています。「なぜ」と聞かれて説明に窮するようなことがあれば、我々も理解が足りないということであり、価値のある気付きになります。アメージャン取締役から「これはおかしいのでは」と指摘された際に、私は「カルチャーの違い」と説明することがありますが、それでは議論の発展はありません。「こういった理由があるためです」と踏み込んで説明すれば、そこから議論が始まり、新しい発想が生まれると思います。

アメージャン氏

私も、互いの考えを伝えることがもっとも大切だと思います。現在の取締役会はQ&Aや報告の時間も多いのですが、これからは議論をさらに増やしていきたいと思います。

篠原氏

篠原氏

社外取締役の役割の一つは、例えばリスクマネジメントの仕組みなど、改善の取り組みが着実に進捗しているかを注視していくことだと考えています。私自身はまだ社外取締役の経験が浅いので、どういった形で議論すれば三菱重工に貢献できるのかと常に自分に問いかけながらやってきましたが、今後も同じ問いかけを繰り返しながら、一人のステークホルダーとして議論していきたいと思っています。

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