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三菱重工グラフ graph -Read the future-

No.167 2012.04

MHI NEWS!

石炭焚き火力発電所で1日500トン規模のCO2回収・貯留実証試験がスタート

三菱重工は米国の大手電力会社サザンカンパニーと共同で、石炭焚き火力発電所で生じる排出ガス中のCO2を回収する、
世界最大規模の実証試験を開始した。

写真:米国アラバマ州のバリー発電所

米国アラバマ州のバリー発電所内。発電所を所有するAlabamaPower(サザンカンパニー傘下の電力会社)は、アラバマ州内の約2/3の地域、およそ140万の世帯やオフィス、工場に電力を供給している。

1日500t!世界最大規模の実証プラント

石炭は埋蔵量が豊富でコスト面でも優れることから、将来的に有望視される天然資源のひとつだ。それゆえ、発電分野においても今後、石炭焚き火力発電所などでの活用が期待されている。一方で、懸念材料なのが発電所からのCO2排出量だ。地球上のCO2排出量のうち約60%は年間10万トン以上の大規模排出源からのもので、そのうちの約76%は石炭焚き火力発電所から排出されたものだ。そのため、国内外の電力各社はCO2排出量を減らすための打開策を探している。こうした中、2011年6月、米国アラバマ州のバリー石炭焚き火力発電所において、排出ガス中のCO2を回収・貯留する世界最大規模の一貫実証試験プロジェクトがスタートした。

このプロジェクトは発電所にCO2回収プラントや貯留システムを併設し、1日あたり500t規模のCO2(1日に人間の呼吸で生じるCO2量で、約57万人分に相当)の回収・貯留(注)を目指すもの。三菱重工は米国大手電力会社サザンカンパニー(Southern Company)と共同で、CO2回収部分における実証に取り組み、プラントの基本設計からエンジニアリング、中核機器の供給、実証運転時の技術サポートまでを担当している。

画像:バリー発電所の地図

実証設備は米国アラバマ州南部のバリー発電所にある。

(注)三菱重工はCO2回収と、回収したCO2を圧縮し、貯留場所につながるパイプラインの入口へ送り出すまでを担当。そこから、地中深くの帯水層に送り込み、封じ込める「貯留」は、米エネルギー省温室効果ガス対策プロジェクトの補助を受けたSoutheast Regional Carbon Sequestration Partnership(SECARB)が担当する。

技術的課題を乗り越え、地球温暖化対策を加速化へ

もとより、石炭焚き火力発電所でのCO2回収実用化には、高いハードルがある。石炭焚きは天然ガス焚きの場合と異なり、排出ガス中に不純物が多く、これらを取り除く前処理装置(排煙脱硫装置)の能力を高める必要があるからだ。そのため今回の実証試験では、石炭の種類や産地の違いによる効率・性能差を調査し、不純物への対処方法を検証することが重要な目的のひとつとなっている。また、長期連続運転時でも性能を維持する信頼性、CO2回収性能の効率化による経済性を確認することも大切な実証テーマとなる。

三菱重工は世界で唯一、天然ガス焚きのみならず石炭焚きボイラからの排ガスの大規模なCO2回収装置でも稼働実績を持っている。天然ガス焚きのCO2回収では化学工場向けに10基の商用プラントを納入し、業界トップクラスを誇る。これらの豊富な商業規模の知見を活かし、今回の試験で石炭焚き発電所でのCO2回収技術を商用レベルへと引き上げていく。

CO2回収から貯留までを含めた一貫実証としてだけでなく、1日あたり500t規模のプラントでの実証運転としても世界初となる当プロジェクト。低炭素社会実現の行方を占う実証試験として、世界中から熱い視線が注がれている。

写真:サザンカンパニー社会長のファニング氏と、実証機稼働後に表敬訪問した当社社長大宮

サザンカンパニー社のファニング会長と、実証機稼働後に表敬訪問した当社大宮社長。記念品として、サザンカンパニー社からCO2貯留先の地下から採掘した岩盤のサンプルが贈られ、当社からはLumiotec(株)が開発した有機EL照明を贈呈した。

写真:モジュール化した巨大な設備

モジュール化した巨大な設備(460t以上)はバージ船に載せて運搬する(ブラック・ウォーリアー川)。

省エネルギーで、CO2回収をかなえるテクノロジー

CO2回収技術で主流となっている化学吸収法とは、発電所などから出る排出ガス中のCO2を特殊な液に吸収させ、その液からCO2のみを分離・回収する方法です。ここで重要な役割を担うのが吸収液。三菱重工のCO2回収装置では、関西電力(株)とともに共同開発した省エネ型の吸収液「KS-1™」を使用するKM CDR Process®(注)という回収方式を用いるのが特長。KS-1™はCO2吸収性能が高いため、従来品に比べて吸収液自体の使用量が少なく、耐腐食性、耐劣化性にも優れます。このKM CDR Process®ではCO2回収率90%以上を達成。さらに回収装置の運転時に使用する電力消費も抑えられ、CO2回収エネルギーの削減にも成功しています。

(注)KM CDR Process®は、三菱重工が日本、米国、欧州共同体(CTM)、ノルウェー、オーストラリアおよび中国において登録商標を取得。他の方式に比べてエネルギー消費量が大幅に少なく、保守・点検の容易さの面でも優位性がある。

写真:水

写真:KS-1™

KS-1™

水とKS-1™を入れたそれぞれの容器にCO2を送り込んだ様子。KS-1™では気泡がほとんど見られず、CO2が液に吸収されていることが分かる。

写真:米国三菱重工業株式会社 環境システム事業部長 加賀見 守男

米国三菱重工業株式会社
環境システム事業部長
加賀見 守男

米国スタイルのプロジェクト運営で、強固な信頼性を確立

当社とサザンカンパニーは、2007年にゴーガス発電所向け排煙脱硫装置を納めて以来のおつきあいで、同装置はその後も4カ所の発電所に納入されました。最近では米国内で新たに法規制化される水銀規制に関し、水銀除去システムを共同実証させていただくなど、技術開発パートナーとしての関係も深めています。今回の実証プラントでは建設コストの上昇が課題でしたが、あらかじめ工場で組み立てた設備などを現場で接合する「モジュール工法」を用いて、建設作業の簡易化と効率化を徹底。結果、納期・予算ともに予定通り運ぶことができました。

プラント建設ではプロジェクトリーダーに米国人を選任し、コミュニケーションを重視する米国流文化に則った運営を目指しました。これが奏功し、発注者・受注者の分け隔てなく意見を述べ、建設的に意見を交わし合えるよい雰囲気が生まれました。また、その背景にはサザンカンパニーは米国の電力会社としては珍しくR&D部門があり、技術の理解・蓄積に積極的である点が当社と似ていたことがあったと思います。プロジェクトの進行中には、化学系プラントを初めて運転する現地発電所の運転員と当社の若いエンジニアが、24時間体制の試運転作業を通じて行動を共にし、信頼関係を築き上げるなど、数々の貴重な体験もしました。

今後はこの経験を活かし、来るべき低炭素社会の実現へ向けてCO2回収装置の商用化を推し進め、この環境技術を通じた社会貢献に努めたい。その想いを強くしています。

No.167 MHI NEWS!
CO2回収・貯留実証試験が
スタート