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三菱重工グラフ graph -Read the future-

No.170 2013. 1

特集。動力と明日をつなぐ。社会・産業の発展を支え続ける、堅牢な機械要素「動力伝動装置」

ヘリコプターに使用される航空機用精密歯車。数千馬力の強大な動力に応える強度と極限の軽量さを両立するため、動力伝動装置の中でもとりわけ厳正かつ慎重な精度管理が要求される。
〔愛知県・岩塚工場〕

動力をつぎへ伝え、社会を動かす。太古の時代から変わらない使命。

古代ローマ、ギリシャの時代から、歯車は人類の営みに深く関わってきたといわれている。近代文明の幕開けとなる産業革命期には蒸気機関の動力伝達で重要な役割を果たし、その歯の形は工業のシンボルとして広く用いられている。
現代においても、歯車ほど高効率に力を伝達しうる手段はほかに見当たらない。エンジンやモータが生み出す動力の回転速度を変える、トルクを増幅するなど、最終製品が必要とする動力の橋渡し役として、その活躍の場は広範に及ぶ。
そのような役割をもつ歯車を組み合わせ、動力の減速・増速を高効率かつ高精度に実現するのが、動力伝動装置である。
自動車、航空機、建設機械、そして工場で稼働する多様な産業機械が、その役割を果たすうえで不可欠な存在として、静かにしかし力強く、人と社会の営みを支えている。

卓越の伝動精度 高度な設計や製造技術で、絶対的な信頼・精度を勝ち取る、三菱重工の動力伝動装置。

動力伝動装置は動力機構の重要部分を担い、堅牢性や信頼性を徹底的に考慮した設計が施される。
製造の場面では直径が3メートルを超えるほどの巨大なものでも、ミクロン(1/1,000ミリメートル)オーダーの工作精度で造られる精密製品だ。
三菱重工は、この動力伝動装置の領域につねに新風を吹き込み、その進化を牽引してきた。
その代表格であるニーマン歯形ウォーム減速機は、1964年に生産を開始。高効率に伝達し、高い出力を生む優れた性能から、ウォーム減速機の分野で国内トップシェアを誇り、産業界で広く活躍する。また、1980年には、歯車の代わりにローラを使用し、ローラ間で高い圧接力がかかると高粘度化する特殊な油を介して力を伝える、世界初の画期的な遊星ローラ減・増速機を独自に開発・製品化。ほかにも、回転精度に優れる複リードウォームギヤセットなど豊富なラインナップがあり、高い実績を誇る。

写真:ニーマン歯形ウォーム減速機

製鉄機械に使用される大型ウォーム減速機のホイル部に、歯切り加工が施されている様子。ウォーム減速機ではドイツで考案されたニーマン歯形を採用。
普通歯形では困難だった高強度と潤滑性を両得している。
〔愛知県・岩塚工場〕

写真:大型ウォーム減速機

ウォームギヤとホイルのかみ合わせ(歯合わせ)を調整する、製鉄機械用の大型ウォーム減速機。
ウォームギヤに塗布した青インクがホイルの歯にどのように付着するかを手がかりに、適切な歯当たり(歯の当たり具合)を確認・調整する。
〔愛知県・岩塚工場〕

写真:ウォームギヤの研削工程

複リードウォームギヤセットに使用される、ウォームギヤの研削工程。研削時には冷却や摩擦緩和のために油を注ぎ、ウォームギヤの研削割れ(ひび割れ)を防ぐ。歯合わせ作業と、この研削作業を繰り返しながら、要求される歯当たりに仕上げていく。
〔愛知県・岩塚工場〕

写真:複リードウォームギヤの回転精度を試験する様子

複リードウォームギヤの回転精度を試験する様子。
複リードウォームギヤは極小のバックラッシ(歯面の間のすき間)と高精度を特長とする。回転変動を最小限に抑制できることから、産業用ロボットや工作機械を中心とする精密機械に用いられている。
〔愛知県・岩塚工場〕

写真:遊星ローラ減・増速機

歯車の代わりにローラを用いて減・増速を行う遊星ローラ減・増速機は、歯車の限界値を大幅に凌ぐ回転精度と静粛性を実現した画期的な製品。ローラは高い面圧がかかると摩擦力が増す特殊オイルによって、互いに力を伝え合う。ローラによる転がり伝動のため低振動・低騒音であり、回転誤差も通常の歯車に比べて約1/20と、極めて小さい。
〔愛知県・岩塚工場〕

写真:ウォーム減速機用の鋼ホイル

実用化に向けて研究開発が進められるウォーム減速機用の鋼(はがね)ホイル。従来の銅合金の素材に比べて強度が高いため、より小さなホイルでも同等以上の耐久性が得られ、装置のダウンサイジングが可能になる。銅に比べて硬くなじみにくい鋼の歯のかみ合わせは、素材技術に止まらず、三菱重工の保有する歯車技術を総動員し開発している。
〔愛知県・岩塚工場〕

最高水準を創る 最高水準の現場 高精度な動力伝動装置を製造する、秀逸な解析、製造技術・設備、ツール。

三菱重工は、動力伝動装置の中でもトップクラスの品質と設計難度を要する、航空機用精密歯車を手がける国内でも数少ないメーカーだ。
最高回転数が20,000min-1(注)以上にまで達する製品を、極限の薄肉構造で実現する手腕は、三菱重工が最高水準の歯車設計技術と加工設備を有する証でもある。
独自の解析支援システムや、特殊な負荷運転時の歯当たり解析技術を駆使した設計力は群を抜く。
さまざまな動力伝動装置の開発で得た、過去の膨大なデータから数値を導き、製造後に生じる精度の誤差や性能を予測することに役立てている。
さらに、三菱重工は動力伝動装置から歯車工作機械、精密切削工具までを自社で手がける世界に類のない歯車システムの総合メーカーでもある。
このアドバンテージを背景に、加工に最適な工作機械・精密切削工具を制約なしに選択・使用できることが、高い要求精度の追求を可能にしている。
(注)毎分回転数。1分間に何回転するかを示す単位。

写真:三次元計測器にて最終検査を受ける航空機用精密歯車

三次元計測器にて最終検査を受ける航空機用精密歯車。
これにより設計どおりに加工されているかどうかを確認、確かな品質を保証する。この設備は歯車のみならずほかの構成部品の精度管理にも活用しており、生み出される動力伝動装置を究極の精度・品質へと導いている。
〔愛知県・岩塚工場〕

写真:浸炭焼入れ(鋼に炭を含ませ表面を硬くする処理)を行う様子
写真:浸炭焼入れ

非常に薄肉、かつ強靭な航空機用精密歯車をつくるために、浸炭焼入れ(鋼に炭を含ませ表面を硬くする処理)を行う。
その際、不純物が混ざると亀裂の原因となるため、浸炭処理は真空状態の炉で行う。また、焼入れ後に生じるゆがみを最小限に抑えるには、長年の経験と技術の蓄積が必要である。
〔愛知県・岩塚工場〕

イラスト:自社製アプリケーションを使った負荷運転時の歯当たり解析画面

自社製アプリケーションを使った負荷運転時の歯当たり解析画面。
歯車は負荷の大きさに応じて歯や軸などが変形する。その状態を三次元的にシミュレーションすることで、歯当たりのパターンや歯面のすべり速度といった、歯車が安全に運転するための数値を予測できる。ここには三菱重工が過去30年以上にわたり設計・製作した製品のデータが蓄積され、実際の製品で試すことなく、高精度・高効率に解析が行える。
〔愛知県・岩塚工場〕

写真:独自開発の設計支援システム

回転数約5,000min-1を超える高速の動力伝動装置の設計では、独自開発の設計支援システムが活用される。設計フローに応じ、歯車強度解析、すべり軸受特性解析、振動解析などを実施できる。
中でも振動解析(写真)は、三菱重工が得意とするタービンの設計に不可欠な解析技術を動力伝動装置用にシステム化。これは、タービンを手がける高砂研究所が中心となって開発したもの。
〔愛知県・岩塚工場〕

写真:横中ぐりフライス盤(MAF-RS150C)

工作機械の主軸駆動に自社製高速ヘリカル減速機を採用した横中ぐりフライス盤(MAF-RS150C)。最高回転数が6,000min-1のこの機械の主軸では、モータ回転数を1/6に減速することで、加工力を6倍に増幅でき、重切削への対応も可能になる。
〔滋賀県・栗東製作所〕

写真:自社製歯車研削盤(ZG1000CNC)

自社製歯車研削盤(ZG1000CNC)による研削加工を終えた高速ヘリカル減速機の歯車。
高精度な歯車の仕上げには、機械側にも厳しい精度が求められる。研削盤の回転軸を安定的かつ高精度に減・増速させるため、自社製の遊星ローラ減・増速機を搭載、高精度加工を支えている。このように歯車システムの総合メーカーならではの製品・技術を融合させ、より高いレベルでの製品開発、品質を追求している。
〔愛知県・岩塚工場〕

写真:ニーマン歯形用などの特殊な精密切削工具

ニーマン歯形用などの特殊な精密切削工具。三菱重工では、精密切削工具も製造しているため、歯車の個々の仕様に合わせた精密切削工具の設計・製造がスムーズに行え、お客様からの要望に柔軟に対応することができる。滑らかにかみ合う伝達効率の高いニーマン歯形に切削する工具も、この歯形のために独自で開発したもの。
〔愛知県・岩塚工場〕

社会の内側で 静かに人の為に 歯車製品・加工のエキスパートとして、柔軟かつ最良の解決策を。

三菱重工は歯車の開発・加工において、長い経験と実績を誇る。もともと自社製品向けに開発をスタートした動力伝動装置を、今では社内外を問わずに広く提供。歯車工作機械においても国内最大級の製品領域とシェアを誇っている。自身がメーカーにしてユーザーというアドバンテージに基づいた製品やサービスを提供し、歯車製品から加工設備、ツールまで手がける歯車加工のトータルソリューションカンパニーとしての存在感を放っている。
日本や世界の国々では、三菱重工が半世紀近く前に手掛けた動力伝動装置や歯車工作機械が、今なお現役で活躍する。こうした古い製品や、時には国内外の他社製品についても保守対応を行う柔軟なサポート体制も三菱重工の特長だ。
また既存の機器や設備はそのままに、最新製品と同等の性能や機能へとアップグレードを図るレトロフィットや、オーバーホールも実施。用途にマッチする製品の提案から、歯車加工に関する技術サポートまで、お客様視点のきめ細やかな対応力にも厚い信頼が寄せられている。

写真:メキシコ・チワワ市(チワワ州)の火力発電所で使用されている、発電用タービン

メキシコ・チワワ市(チワワ州)の火力発電所で使用されている、発電用タービン。その稼働時に用いられるモータとタービンとの間で動力伝達を担う、ヘリカルギア減速機のオーバーホール作業。このような作業を通して、装置の万全なコンディションを保ち、ひいては発電所の安定稼働、電力の安定供給を支える。

国境を越え、産業の枠を越え、歯車加工技術の恩恵をより広く社会へ。

歯車製品の高い精度の追求と安定供給は、機械メーカーたる三菱重工の使命でもある。今では世界中で、三菱重工の歯車工作機械や精密切削工具、動力伝動装置が搭載された機械が活躍し、その国の産業を内側から支える。また、お客様や市場ニーズとより密接に結びついた事業展開を目指し、インドでは精密切削工具製造会社や歯車工作機械製造会社、中国では歯車工作機械製造会社、米国ではブローチカッタ・ブローチ盤製造会社を持ち、現地の営業・生産活動を本格化させるなど、アジア・北米を基軸にグローバル展開を図っている。
一方、昨今の産業界の大きな流れである、省エネルギーや環境に配慮した製品・設備に対するニーズは、成長が期待される新興国でも出始めている。これを背景に、自然環境や生活環境、作業環境の改善につながる歯車製品とその技術の提供によりいっそう注力し、製品を通じた社会貢献を広げていく。
三菱重工はこれまでも、そしてこれからも、産業の足腰を担う歯車製品に持ちうる技術のすべてを投じ、快適な豊かさにあふれる時代を力強くなめらかに回転させてゆく。

三菱重工製の動力伝動装置を搭載した製品の一例

缶用充填機
〔三菱重工食品包装機械(株)〕

空缶にアルコール飲料や、ソフトドリンクなどの飲料を高速で充填する缶用充填機。この装置ではウォーム減速機を使い、1分間に最大2,000缶詰められる充填機を正確に回転させている。ウォーム減速機では入・出力軸が直角に交わるため、充填機の背面に装備されるモータや減速機の設置スペースを小さくできる。

舶用発電機タービン
〔長崎造船所〕

高速ヘリカル減速機を搭載した、船舶用の発電装置。蒸気タービンが発生する高速回転出力を、発電機への伝達に適した回転数へと減速する役目を担う。高速に回転するタービンから生じた力を無駄なく電力へ変換するための高効率かつ、低振動・低騒音な性能が要求される。

劇場舞台機構システム
〔新国立劇場オペラ劇場〕

フルコンピュータ制御の最新技術を盛り込んだ、国内初のオペラ専用劇場。その舞台迫りの昇降装置にウォーム減速機が採用されている。オペラのシーン展開に応じて、ニーマン歯形ならではの流麗で静粛な動きで上下するため、演者はより演技に集中でき、観客は心地よく鑑賞を楽しむことができる。

No.170 特集
動力と明日をつなぐ