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三菱重工グラフ graph -Read the future-

No.163 2011.04

特集 未来への約束

栄光のミッションへ 凛とした静けさがみなぎり、成功を確信する瞬間が訪れる。

写真:秋田県・田代試験場

2011年1月22日、H-IIBロケット2号機が打ち上げられ、無事にミッションを完了した。これにより、日本の大型ロケットは14回連続打ち上げ成功を収めた。その頃、次の打ち上げへの準備が日本各地で進められていた。2011年2月14日、記録的な寒波に包まれる中、LE-7Aエンジン(注)の燃焼試験は行われた。
(注)H-IIAおよびH-IIBロケットの第1段エンジン

誇りに火が点る 大気を裂く衝撃は、次のミッションへのカウントダウン。

エンジン燃焼試験は、品質確認の最終工程。点火の瞬間を全員が見つめる。
氷点下の大気を3,000℃の炎が揺るがす50秒間、これまでの全ての作業が試される。
エンジンは磨き抜かれた技を披露し、安定した性能であることを誇らしげに叫ぶ。
張り詰めた緊張から解放された時、試験場には晴れやかな笑顔が溢れる。

写真:秋田県・田代試験場

LE-7Aエンジン点火の瞬間。噴射口を形作る450本の配管隅々まで、?253℃の燃料が行き渡る。噴射される炎は3,000℃、わずか0.5mmの管壁を隔てて極低温と超高温が共存する。 秋田県・田代試験場

写真:エンジン燃焼試験写真:エンジン燃焼試験
A: 燃焼試験前に、入念にエンジンの調整・確認をする技術者。三菱重工 田代試験場は豪雪地帯にあり、極寒の環境のもと作業が進行する。
秋田県・田代試験場
B: 燃焼試験を終えたLE-7Aエンジンは、三菱重工 名古屋誘導推進システム製作所(名誘)にて、専任担当者による最終チェックを行う。その後、ロケット本体への取り付け作業をする三菱重工 名古屋航空宇宙システム製作所(名航)へ移送される。
愛知県・名誘

全てに通じる叡智 プラント全域を知り尽くす総合力が、安全を創る。

ロケットは、大きなクリーンルームの中で、傷つけることのないよう丁寧に組み上げていく。
ほぼ特注の100万点に及ぶ部品は、最高水準の精度と技術でつくられている。
微細な作業をミスひとつなく、淡々とこなしていく匠たちのものづくりの技が、ロケットビジネスを支えている。

2段目の燃料タンク部分を調整する技術者。ロケットの直径はH-IIAが4m、H-IIBは5.2m。巨大な治具を使って少しずつ回転させながら精密な組立作業が進行する。ボルト1本、1本の閉め具合にまで規定値が定められ、すべての艤装作業が手作業で慎重に進められる。 愛知県・名航

写真:愛知県・名航
写真:愛知県・名航

1段目の液体水素タンクと液体酸素タンクを結合させる作業。1段目は全長37m。巨大なものであっても、わずかな傷も許されない。熟練した技術者でも、極度に緊張が高まる瞬間である。 愛知県・名航

写真:愛知県・名誘

宇宙ステーション補給機(HTV)の推進モジュールの下で、作業をする技術者。HTVには、NASAスぺースシャトルなどの有人機設計思想(2フェールセーフ)が採用されている。 愛知県・名誘

夢を打ち上げる

写真:鹿児島県・種子島

ロケットとは、最高水準の技術で組み上げた堅牢な寄木細工

日本のロケットは確立した技術に基づく設計、頑固たる技による製造、全工程での品質確認という最高水準の技術の粋で組み上げられた堅牢な寄木細工である。これらの作業は、秋田で、愛知で、そして世界に誇る美しい射場である種子島で行われ、一切の失敗を許さない打ち上げへと続く。そのため、成功の確信を持って臨む工程でも、極度の緊張が現場を覆う。2,000秒という貴重な耐用時間の一部を使って検証するLE-7Aエンジンの燃焼試験は、その代表例といえるだろう。全てが完璧であると確信できたとき、打ち上げが可能となる。

そして、H-IIAロケット打ち上げの最終判断をするのは、製造から打ち上げ輸送サービスまでを一貫して担当する三菱重工である(注)。そこには、ロケットビジネスを支える誇りが息づいている。

(注)エンジンから機体全体の製造、打ち上げ輸送サービスまでを一貫して担当できる企業は世界で唯一

ISSの生命線、宇宙ステーション補給機(HTV)

“Thank you for the beautiful golden shiny vehicle.”

これは、国際宇宙ステーション(ISS)に滞在する宇宙飛行士からHTVに向けられた賛辞だ。HTVはISSに食料、衣類、実験機器、およびISS機材を届ける無人補給機である。ISSに長期滞在する宇宙飛行士にとって、HTVで運ばれる物資はまさに生命線といえる。年内には、米国のスペースシャトルが退役する予定であり、HTVが船外用物資を輸送する唯一の手段となることから、ISSの活動に欠くことのできない重要な役割を担う。

三菱重工では、HTVの全体システムの取りまとめや製造を行ってきたが、日本国内で初めての補給機開発であったため、苦悩と挑戦の連続であった。とりわけ、船外用物資の出し入れを可能とした機体側面の大きな開口部は、設計者の斬新で大胆なアイデアによって実現した。

そして、三菱重工は、HTVをさらに進化させ、ISSとの往復を可能とする有人宇宙船に挑戦する。

写真:宇宙ステーション補給機(HTV) 「こうのとり」(JAXA/NASA提供)

宇宙ステーション補給機(HTV)
「こうのとり」(JAXA/NASA提供)

夢と、たしかな未来

ロケット打ち上げが安全に、確実に遂行される裏側には、多くの技術者の静かな挑戦と情熱があった。製造期間3年を要するロケットは、打ち上げからわずか30分でミッションを完了し、役目を終える。しかし、ロケットが運ぶHTVや衛星は人々の記憶に深く長く刻まれることになるだろう。

私たち人類は、無限の可能性を秘めた宇宙へ夢の探求を続けてきた。ロケットで運ばれた月や惑星の探査機、天文観測衛星の活躍に胸を躍らせた人も多いだろう。また、通信・放送・気象分野や環境保護のためにつくられた人工衛星は、さまざまな領域で私たちに恩恵をもたらし、豊かな生活を与えてくれる。宇宙は夢だけでなく、たしかな未来をも約束してくれるのだ。

これからも、安全に、確実に宇宙へ輸送することで世界中の人々の暮らしを支えたい。これが、三菱重工の描くロケットビジネスの姿なのである。

写真:「H-IIAロケット打ち上げ (温室効果ガス観測技術衛星 「いぶき」打上げ)

「H-IIAロケット打ち上げ
(温室効果ガス観測技術衛星
「いぶき」打上げ)

No.163 特集
未来への約束