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HOMEDiscover MHI三菱重工グラフLeading Player

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三菱重工グラフ表紙
2014年11月177号
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Leading Player ~先覚者に聞く~

人々の夢や技術を結集した
ロケットエンジンを宇宙へ!

世界トップレベルの技術水準を誇る日本の大型ロケットH-IIA(注1)。
その巨大な躯体には三菱重工のロケットエンジンが搭載され、打上げの信頼性向上に貢献している。
三菱重工の真子弘泰は液体ロケットエンジン「LE-7A」に開発当初から関わり、日本の液体ロケットエンジンの歴史とともに歩んできたエンジニア。
多くの人々の夢が集うロケットエンジン開発への想いを語ってもらった。

Pick Up Pioneer
三菱重工舶用機械エンジン株式会社 主幹技師 白石啓一
Profile

防衛・宇宙ドメイン
誘導・推進事業部
エンジン・機器技術部
液体ロケットエンジン設計課
将来エンジン担当次長 工学博士
真子弘泰(まなこ ひろやす)

1990年三菱重工に入社後、一貫して液体ロケットエンジンの開発に携わる。
「LE-7A」エンジン開発の初期から量産打上げまで担当し、現在は新型基幹ロケット用エンジンの開発を推進中。

液体ロケットエンジンとは?

液体水素と液体酸素を混合して燃焼させ、推進力を得るエンジン。固体燃料のロケットエンジンに比べ燃焼効率に優れ、出力制御が可能。

写真:第1段エンジン「LE-7A」

第1段エンジン「LE-7A」

世界で評価されるエンジン

Q. 開発されたロケットエンジン「LE-7A」とは?

A. 日本初の国産大型液体ロケットエンジン「LE-7」の改良型で、部品点数を減らし、よりコストを削減すると同時に信頼性を高めました。2001年8月、H-IIAの試験機1号機で初めて採用され、その後25号機まで打上げを重ね、各種衛星や惑星探査機などを宇宙空間へ運んでいます。さらに、新型ロケットH-IIB(注2)には2基搭載され、国際宇宙ステーションへ食料や実験装置などを送り届ける役割を果たしています。

写真:作業中の様子

Q. 「LE-7A」はどのような評価を得ているのか?

A. 国際的にも「LE-7A」の評価は高く、今や日本のロケットエンジンは米国と対等のレベルに達したという声も聞かれます。最近では部品の輸出や海外企業との共同開発もスタートしており、「LE-7A」の性能や信頼性が認められた、なによりの証左だと思います。

開発を支えるのは人間関係

Q. 「LE-7A」の開発で心に残った出来事は?

A. やはり初めての打上げですね。種子島宇宙センターの発射場で打上げの瞬間に立ち会ったのですが、打上げ映像を見る余裕はありませんでした。第1段エンジン(注3)の「LE-7A」は点火から燃焼終了まで約400秒あるのですが、これが実に長いのです(笑)。設計担当者はエンジンを据え付けてしまえば手を加えられないので、点火後はデータを凝視しながら祈るような気持ちで見守るのみ。燃焼を終了したところで、ようやくひと息つくことができました。「LE-7A」の燃焼終了直後には、同じく三菱重工が開発した第2段エンジン「LE-5B」が燃焼を開始。衛星を分離し、軌道投入を無事に果たす(打上げミッション終了)までのおよそ30分間、気を緩めることはできません!

Q. 開発において重要なポイントは?

A. ロケットエンジンの開発は人間関係で成り立っています。1基のエンジンの製作には、数多くの社内関連部門や協力企業・団体が関わります。緊急を要する製作や作業も多く、関係先が即座に動いてくれる体制づくりが欠かせません。そんなとき、ものをいうのが日常の業務で培った人間関係。私も普段から社内外を問わず交流を図り、信頼関係を築いています。小さな部品の一つひとつがロケットを打ち上げるために必要不可欠なものであることを丁寧に説明すると、関わる方々はみなモチベーションが高まります。なんといっても、ロケットエンジンの成功は関係者全員の夢ですから。

Q. ロケットエンジニアに必要な心構えとは?

A. 若手エンジニアに求められるのは、まず妥協しないこと。いろいろな現象に真摯に向き合うこと。そして、どんな困難な場でも決して立ち止まらず、前へ進んで物事を動かしていくことです。開発の段階では試してみないことには結果がわからないこともありますので、悩みこまず思い切って進めてみる姿勢も大切。敢えて困難にぶつかってみなければ前へ進めません。さらにプロジェクトリーダーになると、技術力の向上はもちろん、スケジュールやコストとのバランスをつねに図らなくてはなりません。

宇宙開発の未来の扉を開く

Q. ロケットエンジンの社会への貢献度は?

A. 通信衛星や気象衛星、災害監視衛星など宇宙空間を利用したインフラは、今や私たちの暮らしに欠かせないものです。人工衛星を打ち上げるにはロケットエンジンが必要ですし、なにより宇宙には人々の夢があふれています。

写真:工場内での様子

Q. 今後のロケットエンジン開発は?

A. 現在、「LE-9/LE-11」という新型基幹ロケット用エンジンを開発中です。私の担当する「LE-9」は「LE-7A」よりもさらに部品点数を絞り信頼性を向上する予定で、第1段エンジンをここまでシンプルにするのは世界初の試みです。約8年前から技術研究を進めており、現在開発の準備に入っています。完成すればパワーアップしつつ、低コストかつ信頼性を向上させたエンジンになるでしょう。順調に進めば2020年の打上げが予定されています。将来は再使用型エンジンの開発や有人宇宙飛行の実現をこの目で見届けたいですね。

(注1)H-IIA
高い信頼性を誇る日本の主要基幹ロケット。

(注2)H-IIB
2009年9月以降、運用を開始した大型ロケット。HTVの打上げやH-IIAと併用することで幅広いニーズに対応。

(注3)第1段エンジン
H-IIA、H-IIBは2段式ロケットで、第1段エンジン「LE-7A」と第2段エンジン「LE-5B」などを順次燃焼させて打ち上げる。第1段エンジンは地面から機体を持ち上げて高度約400キロメートルまで押し上げ、第2段エンジンは高度維持や軌道修正などに使用される。

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