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三菱重工グラフ表紙
2014年8月176号
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Leading Player ~先覚者に聞く~

あきらめない姿勢が生み出した
世界初の機械

自動車のトランスミッションに内蔵される小型なものから、船舶、風力発電用の大型なものまで、動力の伝達に欠かせない存在が“歯車”である。その歯車加工の分野で、三菱重工は世界をリードしている。
中でも注目されるのが、これまで困難とされてきた高精度な内歯車の仕上げ加工において量産化を実現した、世界初となる内歯車研削盤「ZI20A」である。その開発・設計チームのリーダーである栁瀬吉言に、歯車研削盤開発のこれまでと未来を語ってもらった。

Pick Up Pioneer
三菱重工舶用機械エンジン株式会社 主幹技師 白石啓一
Profile

機械・設備システムドメイン
工作機械事業部技術部
歯車機械設計課
歯車研削盤設計チーム
主席チーム統括
栁瀬吉言(やなせ よしこと)

1997年三菱重工に入社、一貫して歯車研削盤の開発に従事。2002年、米・オハイオ州立大学へ研究留学。外歯車研削盤ZEシリーズ、内歯車研削盤ZI20Aなどを開発。

歯車研削盤とは?

工具についた多数の砥粒で、歯車の歯面を研削する機械。内歯車研削盤ZI20Aは自動車のトランスミッションなどに用いられる内歯車の研削加工を高速・低コストで行い、高精度な内歯車の量産化を実現。車のギヤノイズ低減や燃費向上などに大きく貢献している。

写真:三菱内歯車研削盤ZI20A

三菱内歯車研削盤ZI20A

写真:内歯車と砥石

内歯車と砥石

世界初の内歯車研削盤を開発

Q. 三菱重工入社後、今日までの経歴は?

A. 大学で数理工学を学んだ後、1997年、三菱重工に入社して以来、歯車工作機械(注1)の設計・開発に携わってきました。2002年、30歳のときに社内の選考を通過し、アメリカのオハイオ州立大学機械工学科の研究室に留学して、歯車の騒音や振動を低減する研究をしてきました。帰国してからは、歯車研削盤の開発や、それらに適した工具の開発にも取り組んできました。

写真:打ち合わせの様子

Q. 開発を担当した内歯車研削盤「ZI20A」とは?

A. それまでの歯車の製造工程では、ほとんどが歯切り加工の後に熱処理され、そのまま機械に組み込まれていました。熱処理の際にひずみが生じるため、熱処理後に研削加工を行うのが理想でしたが、内歯車は加工が難しく、量産化がかないませんでした。そこで開発したのが「ZI20A」です。硬度の高いビトリファイドCBN砥石(注2)を採用し、研削速度や工具の配置・形状を見直すことで、わずか90秒で熱処理後の内歯車を高精度に加工することが可能となりました。また、工具の寿命も延びて、ユーザーにとって大幅なコストの低減につながりました。ZI20Aは、三菱重工が持つ技術のノウハウを結集した、世界初の内歯車研削盤です。2009年にアメリカの展示会「Gear Expo」に機械を出展した際には、業界から驚きの声が上がり、多くの方から高い評価を受けました。

根気強く、複眼的に考える

Q. 困難な課題の乗り越え方とは?

A. お客様の要望を聞き出し、実現する過程で、私たちの技術も磨かれていく。そんなクリエイティブな関係を築くことがエンジニアの役割と捉えています。お客様があきらめかけているような難しいことを、私たちが解決したいのです。それには粘り強く考え続け、さまざまな角度から仮説を立て、複眼的な思考を持つよう心がけることが大切です。「できない」とは決して思わないことです。それに加え、仲間と協力し信じて、課題に真正面から取り組むことです。

Q. 海外経験は、仕事にどんな好影響をもたらしましたか?

A. 留学先で海外にいる歯車の研究者や技術者と交流する機会を持てたことが、一番の収穫だったと思います。こうした出会いを通じて人脈を広げたり、より広い視野で物事を捉えられるようになり、仕事のレベルを上げることにも繋がりました。また、三菱重工は日本国内では歯車工作機械のトップメーカーですが、海外には優れた競合他社があり世界の広さを実感しました。そうした経験が契機になって、「世界でトップの歯車研削盤メーカーになろう、そのトップメーカーで活躍するエンジニアになってやろう」と思うようになりました。

Q. 世界を市場とするために大切なことは?

A. 他社が真似できないような技術を追求し、機械の性能や魅力を高めることはもちろん大事ですが、「よい機械をつくり、納品したら終わり」ではありません。お客様に喜んで使っていただき、当社独自のノウハウを伝えるなどのアフターサービスこそが重要と考えています。そのためには「現地に派遣できるようなグローバルな人材を、日本で育てていく」という視点も欠かせません。

地球環境に配慮した歯車を
写真:社内での仕事の様子

Q. 歯車加工技術の向上は、私たちの暮らしにどう役立っていますか?

A. 世の中の地球環境に対する関心の高まりとともに、車の静粛性や燃費の向上が求められるようになりました。内歯車を高精度かつ、量産・低コスト化できるZI20Aの実用化によって、一段と歯車研削加工の普及が進むと、ハイブリッド車をはじめとしたより多くの乗用車にも使用されるようになり、よりスムーズで静かな走りが実現されるでしょう。さらには、歯車機構の高効率化やコンパクト化にも貢献します。今後は、トラックやバスなどの大型車両や車以外の産業分野へと適用範囲が広がり、それらの騒音の低減や燃費向上といった環境改善にも繋がっていくはずです。歯車は普段の生活の中では人の目にふれることのない、いわば「縁の下の力持ち」で、目立たないことが高い技術の証といえます。これからも、理想的な歯車加工を提供できるよう、果敢に取り組み、あきらめない姿勢で日々開発を続けていきます。

(注1)三菱重工の歯車工作機械
初期工程のドライカットホブ盤から、仕上げ工程の歯車研削盤までトータルに加工プロセスをカバーする製品群を有する。また、歯切り工具も製造しており、機械とともに歯車加工に関するソリューションを提供できる総合力を持つ。

(注2)ビトリファイドCBN砥石
ガラス質の結合剤で固められた「立方晶窒化ホウ素(Cubic Boron Nitride)」。CBNはダイヤモンドと同じ結晶構造で、ダイヤモンドに比べて熱安定性がよくダイヤモンドに次ぐ硬さを持つ。

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