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現在の課題

燃料の高騰や供給不足が、産業に与える影響

いつの時代にも、モノの生産や流通、経済の成長には、豊富なエネルギー源が不可欠でした。例えば1960~70年代、日本の高度経済成長を支えたのは、それまでの石炭に代わって大量かつ安価に供給されるようになった石油でした。1973年にはエネルギー供給の77%を石油が占めていたほどです。

ところが、1973年に第一次石油ショックが起こります。第四次中東戦争の最中にあったペルシア湾岸の産油国が、政治的戦略として原油価格を引き上げたり、一部の国への石油禁輸を決めたのです。これにより石油価格は大幅に上昇し、エネルギーを中東の石油に依存してきた先進工業国の経済は深刻な打撃を受けることになりました。
2度目の石油ショックは、78年の石油輸出国機構(OPEC:Organization of the Petroleum Exporting Countries)の原油価格の値上げと、翌79年のイラン革命による石油生産の中止によるものです。

70年代に2度にわたって発生した石油ショックで、日本もエネルギー政策の根本的な見直しを余儀なくされます。産業界では省エネルギーを徹底的に進める一方で、エネルギー自給率を高めるため、国は原子力や新エネルギーの開発•導入に熱心に取り組むようになりました。
かつて8割近くあった石油依存度は、その後、5割以下に低減しましたが、天然ガス、石炭などを含めた化石燃料全体への依存度は、83%と依然として高い水準のままです。今後は世界の化石燃料の埋蔵量が減っていき、将来的には価格の高騰も危惧されており、化石燃料への依存度がこのままの水準で推移すれば、日本の産業はいずれ大きな影響を受ける可能性があります。

今大切なことは、政治•経済•社会情勢の変化に過度に左右されずに、エネルギー源を確保し、エネルギーの多くを自前で供給できるような体制をつくること、つまり「エネルギーセキュリティ」です。

図:一次エネルギー国内供給の繊維

(注)「総合エネルギー統計」では、1990年度以降、数値について算出方法が変更されている。

(出所)資源エネルギー庁「総合エネルギー統計」をもとに作成

(出典)エネルギー白書 2009

化石燃料への過度の依存がもたらす環境への影響

図:世界のCO2排出長期見通し

(出所)財団法人地球環境産業技術研究機構(RITE)

(出典)日本のエネルギー 2009

化石燃料への依存度が高い社会は、別の面でも課題を抱えています。いま人類が正面から向き合わなければならない地球温暖化という問題と、化石燃料の使用とは密接な関連があると言われているからです。 産業革命以降、人類は石炭や石油など化石燃料の使用を増やしてきましたが、その増加傾向は、CO2(二酸化炭素)などの温室効果ガスの増加と比例しています。温室効果ガスの発生によって、大気圏の温度が上昇すれば、食糧供給や人間の居住環境にとって深刻な問題が発生することが懸念されています。

気候変動に関する政府間パネル
(IPCC:Intergovernmental Panel on Climate Change)が2007年にまとめた第4次報告書では、温暖化被害を最小限に抑えるためには、気温上昇の上限は「2℃」以内に収める必要があると指摘されています。
世界のCO2排出量は、1990年に約200億トンでしたが、2010年には約300億トンに達しようとしています。中長期的な見通しでも工業化の進展や、人口の増加などが著しい発展途上国では、エネルギー需要は高まっています。地球環境産業技術研究機構のデータによれば、2040年代には500億トンを超えると想定されています。

気温上昇は2℃を超えるべきでないと確認した「COP15」

90年代から、地球温暖化を防止するため、世界各国が協力して、温室効果ガスを排出する枠組みをつくる動きが始まりました。1992年、リオデジャネイロで採択された「国連気候変動枠組条約」を受けて、同条約の成果について話し合う締約国会議(COP:Conference of the Parties)が毎年開かれています。1997年のCOP3(地球温暖化防止京都会議)では、京都議定書が採択されました。
京都議定書で日本は、温室効果ガス全体を第一約束期間である2008年度から2012年度の平均値で、1990年度に比べ6%削減することを約束しました。その約束を果たすため、2005年から2009年まで、「チーム•マイナス6%」という国民的プロジェクトが進められました。2009年に政府は、2020年には1990年比で25%削減を目指すことを明言。あらたに「チャレンジ25キャンペーン」という国民運動が提唱されています。

2009年コペンハーゲンで開かれたCOP15(気候変動枠組条約第15回締約国会議)では、世界の気温上昇は2℃を超えるべきではないという科学的な見地をあらためて確認し、世界の排出量を大幅に削減する必要があることなどが合意されました。この合意には、京都議定書には参加していないアメリカ•中国なども参加し、世界の取り組みは一歩前進しましたが、具体的な対策の多くはCOP16での課題となっています。
いずれにせよ、削減目標の達成のためには、日本がこれまで培った火力発電設備の高効率化や石炭のクリーン利用といった供給側の省エネ技術や、ヒートポンプや電気自動車(EV:Electric Vehicle)といった需要側の省エネ技術という両面のノウハウを最大限に活かすことが重要です。

化石燃料からの脱却を目指したエネルギーのベストミックス

日本は化石燃料のほとんどを輸入に頼っているため、エネルギー価格高騰や供給不足は、日本国内の経済や社会に直ちに深刻な影響を与えます。また、世界と約束した地球温暖化防止という課題もあります。このように、経済•環境•政治といったさまざまな面から、化石燃料からの脱却が喫緊の課題となっているのです。
しかしながら、化石燃料からの脱却というのは、時計の針を何十年、何百年も巻き戻すということではありません。たとえCO2を減らす必要があるからといって、これまで努力して築き上げてきた豊かな経済や生活文化、暮らしの快適性や安全性を壊してもよいと考える人は少ないでしょう。

そこで重要となるのが、現在の経済性を損なわない形で、エネルギー利用の仕方を変えるという視点です。太陽光などの再生可能エネルギーや原子力などの非化石エネルギーの導入を拡大し、合わせて既存の化石燃料のより効率的な利用法を考えることで、エネルギー構成のベストミックスを目指すことが大切なのです。

参考文献

(1)資源エネルギー庁「日本のエネルギー 2009」
http://www.enecho.meti.go.jp/topics/energy-in-japan/energy2009html/index.htm
(2)経済産業省「エネルギー白書2009」
http://www.enecho.meti.go.jp/topics/hakusho/2009/index.htm
(3)気象庁「IPCC 第4次評価報告書」
http://www.data.kishou.go.jp/climate/cpdinfo/ipcc/ar4/index.html
(4)環境省「IPCC第4次評価報告書について」
http://www.env.go.jp/earth/ipcc/4th_rep.html
(5)WWFジャパン「国連気候変動コペンハーゲン会議(COP15•COP/MOP5) 詳細報告」
http://www.wwf.or.jp/activities/2009/12/779821.html

(注)2010年3月末時点での掲載内容を参考にしております。そのため、記載されているURLまたはその内容が変更されている可能性があります。