社外有識者との意見交換


参加した子どもたちからも、学校関係者の皆さまからも一定の評価をいただいている三菱重工の理科教室。2008年度に向けて、活動の内容をさらに充実させていくには何が必要なのか。このことについて、社外の方から客観的な意見をいただくため、2008年3月24日に意見交換会を開催。CSRに造詣が深く、次世代教育支援なども行う川北秀人氏、NPO(NonProfit Organization)法人JAE(Japan Association For Educational Innovation)の角野綾子氏とともに、2007年度の成果、今後の課題などについて話し合いました。
IIHOE[人と組織と地球のための国際研究所]代表
川北 秀人氏
1964年大阪生まれ。1987年に京都大学卒業後、株式会社リクルート入社。1991年に退職し、国際青年交流NGO(Non-Governmental Organizations)「オペレーション・ローリー・ジャパン」代表などを経て、1994年にIIHOE(International Institute for Human, Organization and the Earth)を設立。NPOや企業によるCSR、環境・社会コミュニケーションの推進を支援する活動を展開している。
NPO法人 日本教育開発協会(JAE)
学校教育事業部 コーディネーター
角野 綾子氏
京都大学大学院を修了後、株式会社UFJ総合研究所に入社。環境・教育分野のコンサルティングなどに携わる。その後、2005年にJAE入社。現在は学校教育事業部のコーディネーターとしてキャリア教育に携わっている。自身のビジョンは自己実現と社会実現の両立。
三菱重工からの参加者

高砂製作所 総務部総務課 課長
西本 憲司

神戸造船所 先端製品・機械システム部
メカトロシステム設計課 主任
日浦 亮太

本社 CSR推進室 室長代理
飯田 敬一
ものづくりの難しさを知ることが「学習意欲の向上」につながる
飯田
2007年度の活動の成果を踏まえて、三菱重工では2008年度内に全事業所で理科教室を実施することを予定しています。
角野
最初は、「三菱重工の製品は、子どもには少し理解しづらいかも」と心配していましたが、スライドで絵や写真を示しながら「こんなところにも三菱重工の製品が使われているんだよ」と説明すると、「そんな製品もつくっているの」と目を輝かせたり、思った以上の反応がありました。
川北
製品が一般消費財でないことは、むしろ見えない技術の意義を伝えるうえで強みかもしれません。丈夫で速い船にはこんな技術が、長持ちする橋にはこんな技術が。と、ものづくりのすごさや楽しさを、子どもたちにもっと自慢していいのでは?イベント的な授業で子どもたちを楽しませるだけでなく、“大人のすごさ”に気付かせることで、仕事の面白さが伝わるでしょう。
西本
当社の活動は、まだ「子どもたちが理科に興味をもつきっかけ」をつくるところでとどまっているのかもしれませんね。三菱重工の製品が世の中でこんな風に役立っているのかというところまでは踏み込めていませんでした。
角野
“大人のすごさ”を伝えるためには、ただ優れた技術や製品を教科書風に解説するだけではなく、こんな失敗を乗り越えたとか、悩みながらも力を合わせて成功したなど、働く大人のドラマを見せることが大切だと思います。
川北
理科の学習で大切なのは、「教わったことが、社会とどうつながっているか・どう使われているか」を理解することですね。
日浦
それは加美南中学校の先生も仰っていたことで、「子どもたちは何でも簡単にできると思っているけど、『自動販売機一つとっても、中ではごっつい計算しとんねんで』という部分を教えんといかん」と、それが数学や理科の学習意欲につながっていくと。それは私たちも意識していきたいと考えています。
環境と教育現場の共通語として「環境保全」を採り入れていく

飯田
今回のカリキュラムでは、理科への興味・関心を引き出すことに加えて、子どもたちも言っていたように「チームワークの大切さを学ぶ」「自分と社会とのつながりに気づく」ということもテーマにしました。教育現場からの要望としては、そういうニーズも高いのでしょうか。
角野
企業とのコラボレーション授業の意義を深く理解する先生はまだ少ないのが実状です。でも、実際に授業をしてみると、「なるほど、このような自分の将来や社会とのつながりに気づく授業は大切だ」とおっしゃる先生は大勢いらっしゃいます。
飯田
とはいえ、学校には教育指導要綱もあるわけで、それをどの程度意識すべきか悩むところですね。
川北
子どもたちの理解度を深めるためには、ある程度授業内容とシンクロしていた方が良いでしょうね。ただ、教育指導要綱にとらわれすぎず、“三菱重工流”の授業をつくったらいいと思います。ものづくりの会社である以上、「ものづくりの大切さが体感できる授業」という力点を変えない方が絶対にわかりやすいでしょう。企業と学校がそうした“共通語”をもつためにもJAEのような存在が大事だと思います。
飯田
共通語という意味では、先ほどの子どもたちの感想を聞いていて、「環境保全」も一つの切り口になるなと感じました。
川北
そうですね。環境負荷削減を進める企業自らが、子どもたちに環境保全の大切さを伝えることは、大きな意義があります。自社が進める環境負荷削減の方法を教えるだけでなく、「社会全体で環境負荷を減らしていくために何が必要か」を伝えることは、理科と社会を結びつけて教えるうえで大切で、CO2排出量を削減するという日本のミッションから考えても、とても重要です。何か新しいものをつくるために工夫する楽しみとともに、「環境負荷を減らす工夫」の大切さを、会社に入る前から知っておくことにもつながりますから。
日浦
高い意識をもって事業に取り組んでいる社員は、それがどう世の中に役立つのか、環境にどんな影響を与えるのかを自問自答しながら、試行錯誤を繰り返しています。それを話すだけでも理科教育になるかもしれませんね。
川北
10年前の製品と最近の製品では環境負荷がどれくらい違うのか、その進歩のためにどれくらい努力したのかといったことも伝えると、子どもたちは面白いでしょうね。
社内外の協力体制をつくって活動の内容を充実させていく

西本
高砂製作所では小学3~6年生を対象に夏休みを利用した「サイエンス・サマースクール」という理科の実験教室を実施しています。講師役の社員たちも博士のような格好をしたりして楽しんでいるのですが、そうした大人たちの気持ちも、子どもたちにはちゃんと伝わります。やはりこちら側も楽しむ姿勢をもつことが大切だと感じています。
日浦
私もwakamaruを使った理科教室をやってみて、こうした活動は想いをもってやらなければできないことだと感じました。少し難しい話をする時に「子どもたちに理解してもらうにはどうしたらいいか」と考えることは自分自身の勉強にもなりましたし、子どもたちの反応に直に触れることはモチベーションアップにつながりました。これから全社で理科教室を実施していくためにも、そうした想いを持った人たちがそれぞれの事業所で育つことを期待しています。

川北
それには会社や各事業所がバックアップする体制をつくることが大切です。また、各事業所で「この人を活動の核にしよう」という人材を3~4人任命し、その方たちから広がっていくといいですね。「キャリア教育マイスター制度」をつくるのも良いかもしれません。
角野
私たちがお手伝いしている企業の中には、授業を若手社員に任せている企業もあります。教材を準備する過程でさまざまな部署と協力する力がついたり、自らの仕事を見つめ直してモチベーション向上につながったりと、社員研修としても効果があったようです。
西本
定年退職したOBにお願いする企業もあると聞いています。年齢が近い人が教えて親しみやすいのもいいですが、年配の人であれば子どもたちもほどよい緊張をもてるかもしれない(笑)。
角野
そうですね。ただ、注意しなければならないのが、経験がある人はどうしても「正解はこうなんだよ」と答えを教えがちになることです。新入社員でもOBでも、子どもが自分たちで考え、答えをつくっていくプロセスを大事に支援していただきたいですね。

川北
この機会にぜひ「三菱重工の理科教室」の基本的な考え方やスタンダードな方法をつくりあげてほしいと思います。また、社員の皆さんががんばるだけでなく、理科教育のためのパートナー開発も考えていただきたい。地域の小学校の先生を巻き込んだ活動にしたり、地域で理科教育に取り組んでいる団体をパートナーにしたり、いろいろな方法が考えられます。事業所のある地域に限定して、そういう人たちを表彰する制度をつくってもいいですね。
飯田
そのためにも、ぜひ角野さんには、教育現場のニーズの汲み上げや客観的な視点からのアドバイスをお願いしたいと思います。どうしても我々だけでは企業側の視点に立った内容になってしまいますが、第三者から見れば企業にも、学校にも、もっと理科教室に活用できるリソースがあるかもしれない。そうしたコーディネートを期待しています。
角野
たしかに、企業側とNPO側が双方勉強し合って内容を高めていくことが大切でしょうね。
西本
私たち高砂製作所では、これまでも我々なりに自分たちの思いで教育支援活動を実施してきましたが、今日のお話を聞いて、もっと社会とのつながりがわかるような工夫や子どもたちの人間形成に役立つような工夫も必要だと思いました。今後は社外の方の評価や意見をいただく機会も増やしていきたいですね。
角野
三菱重工は大きな会社だけに動かすのは大変だと思いますが、ファーストステップ、セカンドステップと、少しずつでも前進していくことで大きなインパクトが得られると思います。グローバルに事業を展開している企業なので、そのインパクトを世界全体に広げることも、地球環境全体を左右するくらいの大きな動きにしていくことも夢ではありません。せっかく始まった動きが止まらないよう私たちも精一杯協力していきたいと思います。
飯田
本日はありがとうございました。
| 概要 | |
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