対談

「社会インフラ」の重要性がクローズアップされるなか、その担い手である三菱重工のCSR(企業の社会的責任)はどうあるべきか。女性の視点で社会貢献活動にも積極的に取り組んでいるフリーアナウンサー・渡辺真理氏と取締役社長の大宮英明が対談しました。
プロフィール
三菱重工業株式会社 取締役社長
大宮 英明(おおみや・ひであき)
1969年に入社以来、航空機開発に携わり、1999年に名古屋航空宇宙システム製作所副所長。その後、取締役常務執行役員・冷熱事業本部長、2007年4月取締役副社長執行役員(ものづくり革新推進担当)などを歴任した後、2008年4月に取締役社長に就任。現在、社長就任4年目を迎えている。
フリーアナウンサー
渡辺 真理氏(わたなべ・まり)
1967年6月27日生まれ。神奈川県横浜市出身。国際基督教大学教養学部卒業。1990年に入社したTBSを1998年3月に退社。1998年5月よりテレビ朝日「ニュースステーション」にキャスターとして出演。現在テレビ、ラジオなどメディアを中心に活躍中。
東日本大震災で被災した地域の早期復興に全力で取り組む
- 渡辺
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今年3月11日に起きた東日本大震災は、東北地方を中心に甚大な被害をもたらしました。民間企業にもさまざまな被害・影響が出ましたが、御社はいかがでしたか。
- 大宮
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当社のことをお話しする前に、大震災でお亡くなりになられた方々のご冥福を心よりお祈り申し上げるとともに、被災された皆さまに謹んでお見舞いを申し上げます。
当社グループに関していえば、事業所の多くが西日本にあり、社員や工場への被害はほとんどありませんでした。
- 渡辺
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震災被害のことを考えると、胸を痛めるばかりです。心からお悔やみとお見舞いを申し上げます。今回ほど電気や水道といった社会インフラの重要性を認識させられたことはありませんでした。
- 大宮
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はい。人々の生活基盤であるインフラ、これをつくっている当社のような企業は、極めて大きな責任を負っています。このことへの自覚を新たにしました。
今、当社は、被災した東京電力・東北電力管内の火力発電所に延べ約10,000名の社員を派遣しているほか、仙台市内のごみ焼却施設の復旧作業に対応するなど、当社製品が採用されたインフラの復旧に全力で取り組んでいます。さらに、東京電力からの要請を受けて火力発電所用ガスタービンを提供する準備を進めているほか、福島第一原発の原子炉は当社の製品とは炉型が異なるものの、放射性物質の拡散を抑えるためにできる限りの協力をするなど、事故収束に向けた支援も行っています。
また、社業を通じた復興支援のほかにも、地震の発生後すぐに社有ジェット機を飛ばして被災地への医薬品の輸送に協力したり、三菱重工グループとして5億円の義援金、社員たちで集めた個人募金などによる支援も行っています。被災したインフラの一日も早い復旧と被災地の復興に、今後もグループの総力を挙げて取り組んでいきます。
CSRを企業経営の基軸に据えて地球社会の持続的発展に貢献する
- 渡辺
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インフラに関わる企業の社会的責任(CSR)は大きい、と自覚しておられる大宮社長に、改めて御社のCSRに対するお考えを伺いたいと思います。
- 大宮
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第一に、地球社会の持続的発展に貢献する製品を世界中に提供していくこと。これが、当社グループ最大の社会的責任だと考えています。三菱重工グループは、発電プラント以外にも鉄道システムや航空機、船舶、橋梁など、さまざまなインフラを提供することで、社会を支えています。従って、自らの事業、製品づくりに真摯に取り組むことが、当社の最も重要なCSRであると考えています。
また、そうした製品提供から得た利益を、株主、ビジネスパートナー(サプライヤー)、地域社会、社員など、当社のステークホルダーの皆さまに最適配分していくことも、当社が果たすべき重要な社会的責任です。
- 渡辺
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社会インフラづくりを担っている御社は、短期的な利益創出だけでなく、長期的な視点に立った価値創造も求められますね。
- 大宮
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はい。当然、株主をはじめステークホルダーの皆さまには、できるだけ多くの利益を、できるだけ早く還元できるよう努めています。しかし、おっしゃるとおり、社会インフラの開発には長い時間がかかります。
例えば旅客機のような、多くの人命にかかわる交通インフラの開発では、「安全」をおろそかにすることは絶対にできません。そして「安全」の確保には、多大な時間とコストを要し、短期的利益の追求とは相容れない面もあるのです。
当社は、数年前から環境負荷の少ない小型ジェット旅客機「MRJ」の開発を進めています。以前、ある株主さまから頂戴したお手紙には、こう書かれていました。「私たち夫婦は、三菱重工がMRJという夢のある製品を開発していることを知って、株を最少単位の千株だけではありますが購入しました。これからも世の役に立つ仕事を続けてください」と。私は、この手紙を読んで、当社の「長期的な価値創造」に共感していただいていると感じ、とても勇気づけられました。
- 渡辺
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私も、世界中の空で活躍するMRJを早く見たいと思います。でも、そんなふうに事業をグローバル化していけば、CSRのあり方を変えていく必要もあるのではないでしょうか。
- 大宮
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ご指摘のとおりです。世界経済の成長エンジンは、先進国から今や中国・インドをはじめとする新興国に移りつつあります。一方、それらの国々の多くはエネルギーや水の確保などさまざまな課題を抱えており、これらの課題を解決する社会インフラへの期待が高まっています。
そこで、三菱重工が“真の総合力”を発揮して、世界各地の課題を解決していくために、2010年4月に5ヵ年の中期経営計画を策定し、これを実行するための組織改革も進めています。エネルギーや環境に関わる部門がそれぞれ提供していた製品を組み合わせて提案する「エネルギー・環境事業統括戦略室」を2008年に設け、すでに世界各地で多くの成果を上げています。さらに今年4月には、これまで事業本部(本社)と事業所(工場)に分かれていた製品事業に関わる責任と権限を事業本部に一本化しました。と同時に、コーポレート部門の機能と組織を再編し、全社戦略立案や事業本部をまたがった改善活動の支援、業務プロセスの高度化などを推進する全社の大きな共通基盤としての役割を担うものとしました。
- 渡辺
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世界各地からの期待に応えていくために、事業本部の連携を強化したわけですね。
- 大宮
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はい。ただ、それでも海外の事業展開には難しい面も多々あり、我々が長年培ってきたノウハウに加え、地域に合わせた対応が必要です。例えば発電所をつくるとき、国によっては部屋の内装の素材や色合いにまで細かな変更を求められることもあり、我々はお客さまのニーズを客観的に分析・把握してアプローチしていかなければなりません。
このように世界各地で風土・文化、さらには商習慣、人権や労働に対する考え方が異なっていることに配慮するのはもちろん、グローバルな基準に照らして必ず守らなければならないこともあり、当社は「国連グローバル・コンパクト」に参加し、それが定める「人権」「労働」「環境」「腐敗防止」の4分野10原則の遵守に努めています。
CSR推進活動に手応えを感じている
- 渡辺
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大宮社長が就任されてから3年経ちますが、これまでのCSR活動の進捗状況と主な成果をお聞かせください。
- 大宮
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まず環境への取り組みからいえば、当社では京都議定書に従って、排出するCO2を「2008~2012年度の5年間平均で1990年度比6パーセント削減する」という目標を掲げており、これを達成するために全事業所で生産設備や空調機の更新、太陽光発電の導入などを進めてきました。2010年度のCO2排出量は約44万トンで目標値レベルまで減少しており、今後もこの状態を可能な限り維持しながら6パーセント減の目標を達成したいと考えています。また、当社がこれまでに提供してきた製品によるCO2削減効果は年間1億トン以上あり(算出根拠を「三菱重工製品使用時のCO2削減量」に記載)、地球温暖化抑制に大きく貢献しています。
さらに、中長期的な目標を明確にするため「三菱重工環境ビジョン」の策定を進めています。今後、このビジョンを指針に、生産時のCO2削減、製品によるCO2削減、さらに省資源・廃棄物削減などの面でも持続可能な社会の実現に貢献していく考えです。
- 渡辺
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御社はCSR中期計画の一つに「安全・安心」の確保を掲げていますが、社員への安全教育でも進捗があったそうですね。
- 大宮
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はい。2010年4月に、名古屋の技術研修所内に「事故展示資料室」を開設しました。この施設は、映像やパネルで過去の製品事故を社員たちに伝えていくことを目的としたものです。開設以来約7,000名の社員が訪れ、その多くが「事故の生々しい状況を知って悲惨さが骨身にしみた」「同じ過ちを二度と起こしてはいけない」と感想を述べています。安全への取り組みの原点は、ものづくりに関わるすべての社員がその重要性を共通認識としてもつことだと考えているので、これは非常に意味のある成果だと捉えています。
- 渡辺
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近年は、サプライチェーンでのCSRの重要性が強調されています。
- 大宮
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はい重要です。この課題については、2009年から、各事業所の資材調達部門の社員を交えて討議を重ねました。その成果として、ビジネスパートナー(サプライヤー)各社が環境保全、人権の尊重、労働安全への取り組みを進めていくための「三菱重工グループ サプライチェーン CSR推進ガイドライン」を2010年7月に発表しました。今後も当社とパートナーが一体となって、社会的責任を果たしていきます。
関連リンク
社員がやりがいをもっていきいきと働ける環境をつくる
- 渡辺
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最近、企業内保育園を開設されたと伺いました。働く女性にとって、ありがたい職場かと拝察します。
- 大宮
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2010年4月に長崎造船所に「三菱重工キラキッズ保育園」を開設しました。少子高齢化による労働人口の減少は、日本の大きな社会問題の一つで、これを解決していくには、社員にとって子育てがしやすい労働環境を整える必要があります。企業内に保育施設を設けることで、社員は送り迎えが楽になると同時に「いつも子どもの傍にいる」という安心感が得られます。また、子どもたちの様子を社員が職場にあるパソコンのモニターなどで確認できる設備も導入しています。
こうした取り組みに加えて、当社では結婚や出産などで退職した社員を再雇用する「キャリア・リターン制度」も整備しています。これまでに24名がこの制度を利用して職場に復帰しています。
- 渡辺
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まさにワーク・ライフ・バランスに配慮した取り組みの実績ですね。
- 大宮
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他にも、2009年から「35歳プロジェクト(フォーラム35)」という取り組みを実施しています。各職場で中心的な役割を担う35歳前後、いわゆる“団塊ジュニア世代”たちが定期的に集い、部門をまたいで話し合うものです。その中で、個人と組織、家族、社会との関わりなどについて毎回活発な議論が交わされており、多様な働き方を互いに認め合うという面でも良い効果をもたらしていると思います。
また、元気なシニア世代の力を活用していくために、定年退職者の「再雇用制度」も設けています。最長65歳まで契約延長が可能で、再雇用者は後輩たちの指導とともに、次代への技術継承に、情熱をもって取り組んでくれています。また、彼らが長年の業務で身に付けてきた技能やノウハウをマニュアルとして残してもらうこともお願いしています。
- 渡辺
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本日いろいろと伺って、三菱重工は「多様な働き方のできる企業」であり、しかも「働きがいのある企業」だという印象を強く受けました。
- 大宮
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ありがとうございます。初めにも述べましたが、当社の事業は社会インフラをつくることですので、自分たちの仕事をきちんとやることが社会貢献に直結します。そういった意味で、社員がやりがいを感じやすい会社です。むろん、インフラづくりという仕事は、大きな社会的責任をともなっています。だからこそ、社員がいきいきと働ける環境を整え、社員の意欲や能力を十分に発揮してもらうことで、当社がいっそう社会に貢献し、これまで以上にしっかりと社会的責任を果たしていけるようにしたいのです。日本の早期復興を担う企業としての責任を重く受け止め、社会の期待に応え続けていきたいと思います。どうぞこれからも、私たち三菱重工グループにご注目ください。

