「原子力発電って安全なの?」
原子力発電は放射性物質のウランを燃料にしています。そこで、万一事故が発生したとしても、それらの放射性物質を外部に出さないような構造にするなど、「多重防護」の考え方にたって何重もの安全対策を施しています。
これは、まず「1.異常の発生防止」に努め、もし異常が発生したとしても「2.異常の拡大及び事故への発展を防止」する対策を施しておき、更に事故発生に至っても「3.周辺環境への放射性物質の放出を防止」する対策も用意しておくという、念には念をいれた対策を立てて安全を確保しています。

具体的な対策は以下のとおりです。
1.異常を起こさない・・・「異常の発生防止」のための設計とは
自己制御性のある設計
原子炉の中で核分裂反応が進みエネルギーの発生量が多くなると、冷却水の温度が上がり密度が小さくなります。そうなると、中性子が水の原子にぶつかって速度を落とす割合が減ってウランの原子核に吸収されにくくなり、核分裂反応が減少します。
このように異常な核反応を自らの性質で抑制する作用を備えています。
安全上余裕のある設計
各機器に加わる温度や圧力に対して、充分耐えられるような「安全余裕のある設計」を行っています。
- 多重性
- 多様性
- 独立性
- インターロック
- フェイルセーフ
予備機・予備システムを設けて、ひとつが故障しても残った設備が作動するようにしています。
原子炉を止める方法として、制御棒の挿入と、ほう酸溶液の注入という二通りの方法を設けるなど、異なる複数の備えを講じています。
運転するためのシステムと安全を確保するためのシステムは、それぞれ独立した設計とし、一方の故障が他方に影響しないようにしています。
誤った運転操作を行った場合、機器が作動しないようにしています。
異常が生じたとき、自動的に装置・系統を安全な状態にするようにしています。
自然災害(地震など)を考慮した設計
地震、津波、台風、洪水などの自然災害に対しても充分な安全対策を施しています。
運転性に配慮した設計
運転状況が判りやすく、誤った判断や誤操作をしにくい、運転しやすい制御盤を設計しています。
製造、建設および運転開始後の対策
設計だけでなく、製造、建設および運転開始後もさまざまな対策を講じています。
優れた製造技術
壊れにくく、使いやすい、メンテナンスしやすい機器・設備を、選びぬかれた材料と、すぐれた加工技術で製作しています。
厳密な品質管理
設計、製造、建設などで要求される品質が得られるように、各段階で厳しい検査を行っています。
運転開始後の徹底した点検・検査
運転開始後も、各種モニターや定期検査などで異常が起こる前にその兆候を発見し、対策を講じています。
2.異常が起きてしまったら・・・「異常の拡大及び事故への発展を防止」するための設計とは
もし異常が発生した場合には、
- 異常を早期に発見し、自動制御により正常状態に戻すようにしています。
- それでも異常状態が制限値を超えた場合は、原子炉を緊急に自動停止するようにしています。
- 停止後も燃料を確実に冷やすようにしています。
例えば、原子力発電所内の配管から漏えいが生じた場合には、この異常が小規模なうちに検出して対策を講じることができるように、各種の自動監視装置を設置しています。
主要な機器が故障した場合は、原子炉に自動的に多数の制御棒が挿入され、原子炉の運転が緊急に停止するようになっています。
さらに、万が一異常時に制御棒が動かない場合でも,ホウ酸溶液など中性子を吸収する性質をもった物質を大量に投入し原子炉を停止させる装置を備えています。
このように1つの設備が故障しても、他の設備がバックアップして原子炉を止めることができるのです。
原子炉の自動停止の仕組み
異常が起きてしまったら、原子炉は以下に示すとおり自動停止します。
- 異常の発生
- 例えば、
- 原子炉内の温度や圧力が制限値を超えたとき
- 配管に穴が開いたり、ポンプが止まるなどして原子炉を冷やす能力が下がったとき
- 発電所の地震計が震度5以上の揺れを検知したとき
- コンピュータが原子炉を止める信号を出します。
- 原子炉の上部で制御棒をつないでいる電磁石の電流が切れます。
- すべての制御棒が自重で落下し、燃料の中に挿入されます。
- 核分裂反応が止まり、原子炉が停止します。
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3.事故が起きてしまったら・・・「周辺環境への放射性物質の放出を防止」のための設計とは
原子力発電所では、万一異常が拡大し事故になったとしても、放射性物質が発電所の外にでないようにしています。
その1. 燃料の破損・溶融の防止
万一原子炉につながる配管が破れて冷却水が流れ出し、原子炉内の水がなくなったとしてもても、非常用炉心冷却設備(ECCS)により、自動的に大量の水を原子炉に注入して燃料を確実に冷やします。
非常用炉心冷却設備により、直ちに原子炉の中へ大量の水を送り込んだり、燃料棒の熱による破損を防ぎ、放射性物質が放出されるのを防止します。また、格納容器スプレイ設備によって、格納容器内の蒸気を冷却し、液体にして容器内の圧力を下げ、浮遊している放射性物質を減少させます。
出典:(財)日本原子力文化振興財団「原子力2008」
その2. 放射性物質の環境への放出防止
万が一、事故があった場合でも原子炉の中で発生する放射性物質が外部に漏れないように「原子力炉容器」内に閉じ込めます。
また、原子炉容器から放射性物質が出るようなことになっても、厚さ約4.5cmの鋼鉄製の「原子炉格納容器」とそれを覆う厚さ約80センチの鉄筋コンクリート製の「原子炉建屋」で、閉じ込めるようにします。→「5重の壁」
第1の壁は、ウランの燃料は高温で焼き固めたセラミックの状態になっている「ペレット」です。核分裂生成物の殆どがペレットの中に閉じ込められます。
第2の壁は、ペレットを覆っているのがジルコニウム合金製の「被覆管」です。ペレットの外に出てきた少量の放射性物質はこの中に閉じ込められます。
第3の壁は、厚さ約20センチの鋼鉄製の「原子炉圧力容器」です。万が一被覆管にピンホールが開いて、わずかな放射性物質が漏れた場合でも、冷却水の中に漏れた放射性物質を、容器とそれに繋がる配管内に閉じ込めます。
第4の壁は、圧力容器を納める鋼鉄製またはコンクリート製の「原子炉格納容器」です。主要な原子炉の機器を覆っています。コンクリート製の場合その厚さは1メートル以上もあり、万が一放射性物質が原子炉から出てきても閉じ込めておくことができ、周辺へ放射線を漏らさないようにします。
第5の壁は、厚さ数十センチの厚いコンクリート壁で放射性物質を閉じ込める「原子炉建屋」です。




