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Chapter 8 形を変える飛行機

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■飛行中に形が変わる航空機
 高速で飛ぶ飛行機には、後退角のある主翼が適していることについては、Chapter4でご説明しました。しかし後退翼は、低速で飛ぶ場合の効率が直線翼よりも劣ります。では低速でも高速でも高い性能を求められる飛行機には、どのような主翼を選べば良いのでしょうか?一つの選択肢として、飛行中に形を変える「可変形状翼」があります。


■可変後退翼機
 超音速で飛行する軍用機の一部は、図1左のような可変後退翼という機構を採用しています。高速でダッシュする時、主翼を後退させて空気の圧縮に伴う抵抗を減らし、低速では主翼を前進させて大きな揚力を得る、というのが可変後退翼の最も一般的な使い方ですが、高性能な飛行制御装置を搭載した機種では、常に最大の運動能力を発揮できるように細かな後退角制御を自動で行うものもあります。


 【図1 後退角が変わる航空機】

■斜め翼というアイデア


 可変後退翼機は、主翼付け根の回転軸で主翼の荷重を支えます。この回転軸は非常に頑丈に作られるため、可変後退翼機の機体構造重量は通常の飛行機よりも若干重くなります。この問題を改善する方法として図1右のような「斜め翼」が提案されており、実験機による飛行試験も行われたことがあります。この形態ならば、左右の主翼を一体で作ることができますので、回転軸は1つになり、翼の曲げに関する力を回転部分で保持する必要がなくなります。


■可変後退翼のデメリット


 性能面ではメリットの多い可変後退翼機ですが、デメリットもあります。たとえば主翼に舵面や燃料タンクを設ける場合、回転機構との両立には様々な工夫が必要です。回転機構が故障した場合の安全対策も無視できない問題です。
 また一般に、可変後退翼機の開発には、普通の航空機開発よりも期間と費用が必要といわれていますが、これは、主翼の後退角をさまざまに変えた場合について、個別に設計作業と試験を行うことによる当然の結果です。一時期、各国で相次いで開発された可変後退翼機が、今日ほとんど省みられない理由の一つは、こうした開発作業の複雑さが嫌われているからでしょう。


■新たな可変形状航空機


 ところが、つい最近になって全く新しい概念の可変形状航空機が米国他で提案され始めています。これは、主翼の後退角を変える機構に加えて、電圧に応じて変形する素材や伸縮する素材を主翼の表面に採用し、図2のようにあたかも全くの別機の如く主翼の形を変えられる飛行機を開発しようという構想です。最終的にはエンジンの空気取入口や排気口、胴体表面の形まで飛行中に変化させ、いかなる飛行条件でも現用航空機を凌駕する飛行性能を発揮できるようにすることが目標になっている模様です。


【図2 新しい可変形状翼機】

■新技術と航空宇宙技術の融合
 一世代前の可変後退翼機が流行した時期は、チタニウム合金を電子ビームで溶接する技術が普及した時期とほぼ一致しており、ほとんどの可変後退翼機が主翼を支える回転軸部分にこの新技術を採用しています。そして今、複雑な形状変化を迅速に解析できる高性能計算機と、電圧で変形する新素材の普及により、再び可変形状機が脚光を浴びています。
 私たちの身近に毎日のように登場する夥しい数の新技術の中には、航空 宇宙技術と融合して、全く新しい形の飛行機を生み出す可能性を秘めたものが、まだいくつも眠っているに違いありません。

 

 
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