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Chapter 5 要素の移動、全体の調和

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■要素を移動する効果
 主翼,尾翼などの構成要素を機体のどの位置に取り付けるか、という問題は、飛行機全体のバランスを決める上で大変重要です。今回は構成要素を移動した場合の効果と影響について考えてみましょう。


■主翼の上下位置
 主翼は飛行機を空中に支える揚力を発生するという役割を担っていますから、その前後位置は飛行機の重心に近いところ、すなわち胴体の中央付近でなければなりません。一方、胴体に対する上下の位置は、さまざまに選択する余地があります。図(1)に代表的な主翼配置を4つ示してみました。  主翼の上下位置を決める際は、極めて初歩的な影響についてよく考える必要があります。例えば、機内にたくさん乗客を乗せたい旅客機では、低翼式を採用して、主翼の上に床構造を設けるのが便利ですし、荷物の積み下ろしを頻繁に行う輸送機では、貨物室の床が地面に近くなる高翼式が有利です。また、乗員の下方視界が必要な練習機などには主翼を胴体の上に支柱で支えるパラソル式が候補になります。


【図1 主翼の高さ】

■水平尾翼の上下位置


 主翼を高翼または中翼に配置した場合、主翼の後ろに生じる空気の乱れが、下流に位置する水平尾翼に悪い影響を与える可能性があります。これを避けるためには、水平尾翼を主翼よりもさらに高い位置に配置する方法が有効です。最も思い切った対策として、図(2)のように水平尾翼を垂直尾翼の先端にまで移動させたT尾翼と呼ばれる形式があります。  T尾翼形式は、垂直尾翼を頑丈に作ってやらねばならないなど構造的に不利な面もありますが、水平尾翼がなくなった後部胴体左右のスペースにエンジンを配置するなどの有効活用ができますので、低翼の旅客機にも採用された実績があります。


【図2 T尾翼機】

■水平尾翼を前進させる
 水平尾翼は、機首の上げ下げに関する安定性・操縦性の要求さえ満足できれば、後部胴体以外の場所に配置しても全く問題ありません。図(3)のように主翼の前方に配置した水平尾翼はカナード翼などと呼ばれ、この形式の飛行機は先尾翼機と呼ばれます。
 カナード翼は、水平尾翼に比べて重心からの距離を大きく取りやすいなど利点が多く、実用化された例も少なくないのですが、乗員の下方視界を遮る場合がある上、舵面を動かす装置が前部胴体にも必要となるなど従来機より不利な点もあるので、従来形式に取って代わるほどには普及していません。
【図3 先尾翼機】

■要素の移動と全体のバランス

 尾翼などの構成要素を移動すると、子供の頃遊んだ「福笑い」のように飛行機の印象が一変することがあります。最終的に飛行全体のバランスをいかに取るかが難しい点も福笑いと同じで、適切な配置を選択できるセンスが設計者には求められます。
 さて、飛行機を要素に分けて形を検討するのはここまでとし、Chapter6以降は飛行機の形に関して、多くの方々が疑問に思っておられるであろうトピックについて取り上げてみたいと思います。


 

 
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