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Chapter 4 後退翼と前進翼

特集_タイトル
飛行機の形を読んでみませんか
後退翼と前進翼

■飛行速度と飛行機の形
 音の速さに近い高速で飛ぶ飛行機は、一目でそれと分かる特徴的な翼の形をしています。今回は翼を変形した飛行機について考えてみましょう。


■空気を圧縮しながら飛ぶ
 飛行速度が音速に近づくと、飛行機にはたらく空気抵抗は急増します。この理由は「音速に近い速度で飛ぶ飛行機は、空気を圧縮するために余分な仕事をしているから」であると説明できます。
 飛行機が音速よりも十分遅い速度で飛ぶ時は、機体よりも前方に空気の乱れが音速で伝わっていくので、空気の分子は飛行機をよけながら流れ去ってくれます。ところが音速で飛ぶ時は、空気の乱れと同時に飛行機が来てしまうので、空気分子は機体をよけられません。従って飛行機は常に前方の空気を圧縮しながら飛ぶことになり、抵抗が増えるわけです。


■翼を傾けて抵抗を減らす
 空気が飛行機をよけてくれないのなら、飛行機の形を工夫して抵抗を減らせないか、と考えて発案されたのが図1の後退翼です。後退翼の効果を直感的に説明してみましょう。満員電車の中を移動する時、真正面を向いて歩くよりも、体を少し斜めに傾けて歩く方が狭い隙間を通りやすいと思います。飛行の場合も同じで翼を左右に広げて真正面から空気にぶつかっていくよりも、翼を後退させて空気に割り込んでいく方が空気の圧縮が少なくて済むのです。
 後退翼には、翼端部分が失速して機首が急に跳ね上がるという好ましくない特性もありますが、今日では対策が発見されて、広く実用化されています。


【図1 代表的な高速航空機の形】

■前進翼

 後退翼とは全く逆に、図(1)のように主翼を前進方向に傾けても空気の圧縮に伴う抵抗を減らせます。
 しかし、この前進翼は主翼に揚力が生じると、さらに揚力を増やす方向に主翼が捩じれるという危険な特性を持つため、実機への適用は極めて稀でした。近年、複合材技術の進歩により、捩じれを抑止する方法が発見され、実験機などが作られています。



【図2 前進翼航空機】
■後退翼と前進翼の組み合わせ
 後退翼と前進翼を組み合わせた面白い飛行機も提案されています。図3はジョインド・ウイング(結合翼)と呼ばれるもので、後退角を持つ主翼と前進角を持つ水平尾翼の翼端をつないでいます。この形態は、翼端で主翼と水平尾翼が互いに支え合って非常に頑丈になるため、空気の圧縮性とは無縁の低速で飛ぶ飛行機にも適用が検討されているようです。
  全翼形式は、無駄な空気抵抗を削ぎ落とした競技用滑空機や、電波の反射を極限まで減らしたステルス機などに採用されていますが、スピン(錐揉み)に入ると回復しにくいなどのデメリットもあるため、実用化された例はあまり多くありません。


【図3 ジョイント・ウイング】


■要求性能で変わる飛行機の形

 以上ご紹介したように、速い飛行速度を要求される飛行機の多くは、主翼を変形して空気の圧縮に伴う影響を軽減しています。また、よく似た形態ではあっても、結合翼は別の効果を期待したアイデアです。このように要求性能と飛行機の形の関係を学んでおくと、飛行機を観察した結果からより多くの情報を引き出し、その特徴を正しく知ることができます。機体の構成要素を本来の位置から移動した飛行機について考えてみましょう。


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